きっぷ片手に旅をする

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美濃太田~福井間150km 幻の越美線を乗り通す (前編)

 越美線は,中京圏日本海側の短絡ルートとして,国鉄岐阜県美濃太田福井県の福井(南福井駅)の約150kmを結ぶ計画であった未成路線です。岐阜側・福井側からそれぞれ工事を進めていきましたが,途中の県境区間である北濃九頭竜湖間約24kmは未成のまま工事が中断され,現在は岐阜県側の美濃太田北濃間を長良川鉄道越美南線福井県側の九頭竜湖~福井(越前花堂)間をJR越美北線九頭竜線)として,それぞれ長大な盲腸線の状態で運行されています。

 今回その2路線の乗りつぶしを計画し,盲腸線同士ということで2路線のショートカット乗り鉄をしつつ越美線の旅を楽しんできました。

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▲越美線(長良川鉄道越美南線,JR越美北線九頭竜線))と周辺路線の位置関係。Yahoo!地図より。

旅行日:2018年4月

長良川鉄道越美南線 美濃太田郡上八幡

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 旅のはじまりは岐阜県側の美濃太田。東京から早朝の新幹線と特急ひだ号を乗り継いでやってきました。かつては同じ国鉄だったとはいえ,いまでは JR の構内を間借りするようにこぢんまりとした趣で長良川鉄道越美南線のホームがあります。

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 さっそく列車に乗り込み北上します。長良川鉄道美濃市を過ぎると高規格な東海北陸自動車道と並行して進むようになります。東海北陸道中京圏日本海側(富山)を結ぶ道路交通の短絡ルートとして重要な役割をもった道路で,越美線の当初の目論見は現在では東海北陸道が取って代わって担うようになりました。

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 長良川鉄道はその名の通り,美濃市から北側のほぼすべての区間長良川と平行して走り,車窓からその清流を堪能できます。

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 美濃太田から約1時間,郡上八幡駅に到着。ここでいったん郡上八幡の観光に立ち寄りです。

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郡上八幡

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▲八幡町の中心部を流れる吉田川

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中心市街地の一角で

 郡上八幡は河川や水源に恵まれ,「水の城下町」と言われるほど水と共生してきた街で,まちを歩いていると沢山の水路があったり,道端に井戸や水舟があるのがわかります。この水路がたいへん涼やかで,レトロな景観の城下町の町並みとマッチして趣があります。この郡上八幡で昼食をとったり散策したりして夕方頃まで観光していました。名産の食品サンプル工場の見学とかもけっこう面白かったですね。

長良川鉄道越美南線 郡上八幡北濃

 夕方の列車で郡上八幡駅からふたたび長良川鉄道に乗って北上し,終着の北濃を目指します。

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 美濃白鳥の前後でかなり高規格な高架道路が見えてきます。この道路は東海北陸道に接続する「油坂峠道路」で,道路交通における岐阜~福井を結ぶ幹線道路になっています。かつて越美線の未成区間の鉄道代行の役割を持って運行されていたJRバス大野線(廃止済み)も,美濃白鳥から油坂峠を越えて美濃白鳥~九頭竜湖を結んでいました。

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 やがて終点,北濃駅に到着。美濃太田から約77km。ここ北濃から九頭竜湖にかけては線路が敷かれることなく終わった未成区間となります。

 この駅には使っていない転車台などもあってマニア向けスポットでもあるのですが,ここから乗り継ぐバスの時間が迫っているのでチラ見してさっさとバス停に移動です。

白鳥交通 郡上市自主運行バス 石徹白線デマンドバス 北濃駅→石徹白

 北濃駅からの未成区間はバスと自分の足で突き進むことになります。越美線は北濃から岐阜-福井県境に近い石徹白(いとしろ)を経由して九頭竜湖に抜けることになっていましたので,そのルートに沿って越美北線に向かってショートカットします。

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 北濃駅から石徹白(いとしろ)ゆきのバスに乗車。このバスは1日3本(土曜日2本,休日運休)のみの運転のため,かなり乗車難易度が高い路線です。しかしこのバスに乗らないと越美線の未成区間どころか,郡上から福井県に抜けることすら困難になりますので,このバスに乗ることは必須要件でした。郡上八幡での観光をたっぷりしたのもこのバスに乗るための時間調整という意味合いがあります。

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 バスはどんどんと両白山地の山間部へと突き進み,九十九折の急勾配の道路を登っていきます。

 未成のままとなった北濃九頭竜湖間の県境越え区間北濃までは比較的平坦でしたが,なるほどこれでは鉄道を通すにはかなり厳しい地形になっています。この地形を見るとここに鉄道を通すにはループ線や長大トンネルといった線形が必要になります。未成に終わった確たる理由はわかりませんが,この区間の工費が莫大になることが理由の一つに考えられますね*1

 桧峠で太平洋側の長良川流域から日本海側の九頭竜川流域に入り,下り坂をしばらく降りていくと石徹白に到着です。

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 すでに日没を迎えているのでこの日は石徹白の旅館で宿泊。翌日の県境越えに備えます。

(つづく)

*1:あわせて,距離が大差ない北陸本線まわりのルートが改良され,越美線に短絡ルートとしての機能が弱まってきたことも理由のひとつか