前回の記事の続き。
この日は福井県境に近い岐阜県郡上市石徹白(いとしろ)の旅館で宿泊。両白山地の標高700mに位置する石徹白は,白山信仰の拠点として出入りする修験者向けの宿坊が整備され栄えてきた集落です。山岳信仰が薄れてきた現在では静かな山村になっていますが,歴史的な所以があるのか人口300人の集落に10軒ほどの民宿が存在しています。越美線の未成区間はこの付近を通過し,石徹白に駅がつくられる計画だったそうです。
徒歩(2時間):石徹白→家族旅行村バス停
石徹白から九頭竜湖に向かう公共交通機関は存在しません。そのため九頭竜川水系の石徹白川に沿って,8km先の途中にあるバス停まで徒歩2時間のハイキングです。このハイキングが今旅行最大のハイライト。
朝8時に旅館を出て福井・岐阜県道127号線を九頭竜湖方面へ。この道路は冬季通行止めのため注意。県道は文字通り石徹白川にへばりつくようにして九頭竜湖方面に向かいます。
岐阜県-福井県境。県境を直接示すものはありませんが,「これより上流 石徹白漁業協同組合」「これより下流 奥越漁業協同組合管理漁場」との看板があり,漁業権の境界が県境になっていることがわかります。
ところで,こういう山岳地帯の県境は一般的に分水嶺とか尾根とかに沿って引かれるものですが,ここはそうではなく谷を横断するように県境が引かれています。もともと石徹白は越前国に属し,廃藩置県後も福井県に属していました。前回記事で書いた桧峠がもともと県境だったのです。
しかし冬季にこの道路が通行できないため九頭竜湖や福井県庁方面に向かうことができず,政治的いざこざを経て現在の郡上市に昭和33年に越境合併し,岐阜県になったという経緯があります。このような地域の歴史を知っていると道を歩くだけでも楽しいですね。
道を進むと見えてきたのは廃村となった小谷堂(こたんどう)集落。お堂の跡や住居の土台が残り,うら寂しい雰囲気。石徹白から石徹白川下流の前坂集落までは無人地帯で人っ子一人遭うことはありません。
石徹白ダムが見えてくると,徒歩での旅も終盤です。
予定通り,2時間でバス停「家族旅行村」に到着。全体的に下り坂のルートで,石徹白川の清流と山々の残雪を眺めながらのハイキングは心地よく,想像していたほど苦ではありませんでした。
大野市営バス 前坂線 家族旅行村→九頭竜湖駅
この「家族旅行村」からは大野市営バス「前坂線」で九頭竜湖駅へ。このバスは一部の便で事前に予約が必要なデマンド運行をしており,これから乗り込む便は予約が必要なため,石徹白の旅館を出る際にあらかじめ連絡を入れていました*1。
バスは快走して九頭竜湖までの8kmをものの15分で走り抜けました。運賃はたったの100円。バス1台と運転手をつけて100円しか支払わなくてよいというのは,逆に申し訳なくなるくらいの安さです。
JR越美北線 九頭竜湖→福井
九頭竜湖駅でようやく線路が復活です。九頭竜湖駅は鉄道駅ですが,併設された道の駅のほうが油坂峠を越えて岐阜県方面へ行く(から来た)旅行客で賑わっています。
ここから越美北線の列車に乗車。九頭竜湖から2駅先までの勝原までは越美線で最後に開業した区間で,直線的なトンネルで山岳地帯を貫いています。九頭竜湖から北濃までの区間もこのようなトンネルで貫いていたら……と思わず妄想してしまいますね。
のんびりした大野盆地をゆく。越前大野は小京都とよばれてこちらもレトロな街並みをもつ都市なのですが,今回は旅程の都合で大野には立ち寄らずこのまま福井を目指します。
北陸本線と合流する越前花堂で越美線完乗を果たし,終着の福井駅に到着。岐阜県の美濃太田を出発してから25時間。バスあり徒歩ありのかなり難易度の高い乗り鉄でした。
旅行雑感
ググるとわかりますが,このルートでの移動はさまざまなサイトで取り上げていて,比較的有名なコースだと思います。ただ,九頭竜湖泊・美濃白鳥泊のパターンはありましたが,なかなか石徹白泊の旅行パターンがなかったため,行程作成に苦労しました。ボトルネックとなる北濃~九頭竜湖間を考慮した緻密な行程作成と計画通りの行動ができるかどうかがものを言う旅行となりました。