きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

「土木遺産13490m」号でゆく水上温泉街と土合駅

 9月29日,臨時快速列車「土木遺産9702m」が新潟→水上,「土木遺産13490m」が水上→新潟間で運転されました。列車名は土木遺産に認定された上越線の群馬-新潟県境を貫く清水トンネルの長さに由来しています。夏に発表された秋臨のプレスリリースを見て面白い名前だなと思いつつ,新潟方面にラクに行けそうだという単純な理由で「土木遺産13490m」の指定席を予約。乗ってきました。

水上温泉をぶらぶら

 列車に乗り込む前に時間があったので水上駅で下車して水上温泉街をぶらぶらしてました。水上温泉は1928年の上越線の水上延伸と31年の全通によって交通利便性が大きく向上し,それまでの秘湯から温泉街として形成されていきました。一方で,清水トンネルの掘削によって水脈が狂い,温泉湧出量が減ることもあったそうです。そんなわけで,水上温泉上越線清水トンネルと深い縁がある温泉といえます。

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水上温泉の街並み。射的場とクラフトビール店が向かい合う。

 水上温泉は社員旅行等の団体による温泉旅行が隆盛するのにあわせて,首都圏郊外にある団体客を受け入れられる温泉地として発展し,大型の旅館が立ち並び歓楽街が形成されていきました。

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諏訪峡と廃れた旅館

 しかしバブル崩壊後,熱海や鬼怒川がそうであったように水上温泉もどんどん衰退していき,いまでは温泉街を歩いているとひとけがない建物や,明らかに廃墟となった建物が目に付きます。一方で歓楽街の中にはクラフトビール屋やピザ屋のようないまどきのきれいなお店もぽつぽつあり,古い温泉街からの脱却をはかりつつあるように見えました。

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 その温泉街の中心部にある「ふれあい交流館」に日帰り温泉があり,足湯も併設されています。街歩きにちょっと時間がかかってしまい足湯だけで甘んじてしまいましたが,ここで列車に乗る前に一服。ぬるいお湯でしたが,お湯から出たあともじんわりと暖かさが残るいいお湯でした。

土木遺産13490m号に乗車

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 温泉街をバックに引き上げ線から発車した115系電車。この115系が「土木遺産13490m」号です。水上まで新潟の115系が来るのは2年半ぶりとかで,沿線にはカメラを構えた撮り鉄がたくさん見られました。

 水上駅から列車に乗り込むと,ほとんどがマニアだったものの,乗車率は半分ていどといったところでしょうか。こういうヲタ列車はきっぷだけ購入して実際には乗車せず,マルス上は満席なのにいざ発車してみるとガラガラ,といったことは少なくなく,この列車も例に漏れずそのとおりのようです。ちなみにボックス席以外のロングシート部分に指定席が割り当てられなかった(?)のか,ボックス席で別グループと相席になるのを嫌ったのか空席になるロングシート部分で乗車を楽しんでいる人もみられました。

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 列車は2017年に土木遺産に指定された新清水トンネルに入り,土合駅に到着。ここでさっそく30分の停車。

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 土合駅は下り線ホームが駅舎からホームまで462段+αという気の遠くなるような階段を上り下りしていくことで有名です。今回は臨時列車で30分の停車があるのでこの階段を上って駅を出てから列車に戻ってくることも余裕でした。

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 というわけで駅舎を出るところまで行ってみました。階段を500段弱も上っていくとさすがに息が切れます。

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 土合駅の改札には改札の舟が残されており,かつての繁栄が偲ばれます。いまでは駅目当ての観光客が立ち寄る程度にまばらな人影しか見られませんが,かつてはたくさんの登山客がこの駅から谷川岳を目指していきました。

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 良い時間になったので列車に戻ります。まるで要塞の中のような土合駅下り線ホームですが,こうやって鮮やかな車体の電車が停まっているとそれなりに絵になります。

 列車は土合駅を後にするとモータの音をトンネルに反響させながら,ものの10分程度で13490mのトンネルを駆け抜けでゆきました。

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 国境をこえて湯沢のあたりではみのりの秋が広がっていました。天気は残念ですが,115系電車による上越路の車窓を楽しみます。

 その後は越後湯沢・六日町・宮内・長岡・見附・東三条・新津と特急並みの停車駅に限って途中停車して新潟へ。列車もかなりのスピードで飛ばし,これまたモータを唸らせます。六日町→宮内では50kmを40分で走り抜ける快走っぷりで,あの軽やかな走りを体感することはもうできないでしょう。ちなみに停車駅間は短めの運転時分で高速運転でしたが,越後湯沢・宮内・長岡では長時間停車があり,撮影タイムとなっていました。

乗車雑感

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土木遺産13490m」号の指定席券

 上越線ではすでに115系の運用は終了しており,新潟支社管内の115系電車自体が越後線弥彦線等で細々と運用されている状態です。そんな中で使用車両といい,途中駅での長時間停車といい,「土木遺産13490m」号はその名のトンネルそのものより115系を楽しむためのヲタ向け列車といった感が強かったです。ただ私も一介の鉄道好きですので,興味本位で指定をとった列車ではありましたが,この列車のおかげで沿線観光に加えて鉄道車両・鉄道施設をも楽しめた一日となりました。