こちらは2020年まで乗継割引が適用できた「踊り子」の特急券。筆者の実家の最寄り JR 駅のひとつが小田原駅だったため,東京から小田原まで特急「踊り子」に乗って実家に帰り,小田原から東京に新幹線で戻るということをよくしていた。当時は乗継割引がなくなるとは思わず,指定席特急券の手持ちがほとんど無いのが悔やまれる。
また,当初の割高感をおさえる理由の副次的作用として,マイカーでドア to ドアで行ける世の中で「乗り換え」は一般的な利用者にとっては不便な存在であるから,割安となることで心理的な乗り換えに対する負担感を減らすことにも一役買っていたはずだ。
ネット予約の普及が理由というけれども……
乗継割引とは前述の通り利用者にかなり有利な制度である。また,国鉄分割民営化に伴い,新幹線と在来線特急で異なる JR の場合は在来線特急側の JR は単純に減収となる。JR にとって都合の悪い制度であったことは間違いないだろう。しかし,JR 各社は協調して現状にそった乗継割引制度への再設計を行わなかった。たとえば,北陸新幹線敦賀延伸に伴って,富山~敦賀間の新幹線と敦賀~大阪・名古屋間の在来線特急列車を敦賀駅で改札を出ないで乗り継ぐ場合は割安な料金(幹特在特)が設定されるが,そのような仕組みを全国の新幹線・在来線特急列車網に適用することはできたはずだ。
乗継割引廃止後もネット予約商品で代替するという一部 JR もあるが,割引率が低くて列車や席数に限定がありいつも売り切れ状態で景品表示法違反ギリギリのえきねっと「トクだ値」のようなもので代替となるはずがない。少なくとも乗車直前に在来線特急と新幹線を買って割引が適用されなければ代替とはならない。
乗継割引の廃止から見える JR の思惑
JR 各社は列車やサービスを廃止するときにいつも「社会が変わった」とか「利用する人が減った」などと宣うが,これは JR にとって都合の悪い発表をするときに使われる常套文句だ。結局のところ,JR北海道だけでなくJR本州三社も経営環境が悪い方向に変化していく中で,割引率の高い乗継割引が適用されると JR の収益に寄与しないし,自社が展開したいサービスとそぐわないので廃止したいのだ。JR 各社は国鉄時代に築き上げた広範な鉄道ネットワークを分断することによる,自社の収益の最大化ばかりを考えている。
JR は税金で作られた国鉄を引き継いだという経緯があり,協調してサービス面も含めた国鉄時代以来の鉄道ネットワークを維持する責任がある。国鉄が地域ごとに分割された以上,利用者は好き好んで特定の JR 一社だけを利用できるわけではないのだ。
岡山駅でひととおり写真を撮ったら,「やくも」5号のパノラマグリーン車に乗車。私の席は最前列の1号車1番 C 席である。国鉄形電車といえども,車内は2007年からの"ゆったりやくも"化改造によりリニューアルを受けているため,内装や座席に古さはさほど感じない。また「やくも」のグリーン車は1-2列席なのも好ましい*2。
1号車1番 C 席に着席すると,なるほどパノラマ車両というだけあって眼の前広がるのは運転席ごしの前面展望の眺望である。最前列のため側窓の眺望はあまりよくないが,前面だけでも十分すぎる眺望があるので問題ないだろう。ただ経年劣化なのかフロントガラスの曲面部分が白っぽくなっていて,やけに視界に入るのが気になる。
以前,普通車に乗ったときに気になった振り子式車両特有の揺れの大きさは思ったほど感じない。前を見ていて線形がわかっているので,自分がクルマを運転していると G の変化を感じにくいのと同じように,体が身構えるので揺れを感じにくいのかもしれない。また,パノラマグリーン車はモータがついていないため,走行音は大きくない。そんなこともあって,他のディーゼル特急などと比較すると,振り子車両が爆走することによる速度感は小さいように感じた。