きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

「ムーンライトながら」という列車

  2019年冬臨でも東京・大垣間を結ぶ臨時夜行快速列車「ムーンライトながら」が運転されました。18きっぷと組み合わせると格安で東名間を移動できるため指定席は発売開始後すぐに満席となることが多いようですが,席数が多いため払い戻しなどで空席が出ることはあります。さらによくあるのが転売目的で確保されたもののオークションで買い手がつかなかった券が出発数時間前になって払い戻され,空席が発生することがあります。

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 この年末はどこにも行く予定はありませんでしたが,発車直前に発生した空席をちゃっかり確保できてしまったため急遽18きっぷを用意して往復「ムーンライトながら」を利用して伊勢神宮などを観光してきました。

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東京ゆきムーンライトながら大垣駅

 「ムーンライトながら」に乗るのは1年ぶり,東京への帰りとなる上り列車に限っては10年以上ぶりです。

 それにしても「ムーンライトながら」は相変わらず残念な列車です。夜行列車にもかかわらず減灯無し,特急型車両とはいえリクライニングは浅め。始発駅から終点まで乗っても6時間程度で睡眠時間も不足気味になります。夜行バスではもはや標準サービスとなりつつあるフルリクライニングシート,携帯電話を充電するコンセント(USB ポート),公衆無線 LAN のような設備はこの国鉄特急型車両には一切なし。今回は車端部の座席でしたが,人が通らなくてもデッキと客室を仕切る自動ドアがひっきりなしに開閉して騒音になっていました。

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ムーンライトながらの車内

 それでも「ムーンライトながら」という列車に惹かれるのはなぜなのか。昔から使っていて乗り慣れているというのもありますが,バスに比べて比較的身体の自由度が高いのと,寝れなくても移ろいゆく寝静まった街の車窓をいつまでも眺められる夜行列車だけの趣きを格安で楽しめるからでしょうか。ながらが好きというより夜行列車が好きなのでそういう発想になるのかもしれません。

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浜松駅にて停車中のひとコマ

 「ムーンライトながら」は運転されれば満席になるにもかかわらず,旅客会社は運転日を減らしてきています。2019年冬臨では運転日数が11日間となり,運転日数の減少傾向は進んでいます。おおむね青春18きっぷの利用日にあわせて運転されてきましたが,今シーズンは青春18きっぷの利用期間よりも短い設定となりました。現在使われている185系電車は古い車両で,189系を使用していた「ムーンライト信州」がその車両の廃車により2018年冬臨を最後に事実上廃止となったことから「ながら」も同じ道を辿らないとは言えません。

表  「ムーンライトながら」運転日数比較
シーズン 東京発運転日(運転日数)
2009年冬臨 2009/12/11 ~ 2010/01/17(38日間)
2019年冬臨 2019/12/20 ~ 2019/12/30(11日間)

 さらに個人的に問題だと思うところは,この列車に乗っている乗客の客層です。乗っているのはほとんどが鉄道オタクの男性で年齢層も中年が目立ちます。女性はほとんど乗っていません。「冬コミ」開催期間中でしたが,下り電車で痛袋を持った冬コミ参加者とおぼしき人も見かけませんでした。つまり,もはや東名間の移動手段としては一般客から忘れ去られ,「ムーンライトながら」は中年ヲタ列車と成り果ててしまったのです。

 このような列車の前途は残念ながら厳しいものだと思っています。来年も再度運転されることを願いつつ,運転されればまた指定を直前に取って中京圏への旅行をしたいと思っています。