高速道路上にあるバスストップはいいぞ。
一部の高速道路では，高速道路沿いの住民への便宜や都市間輸送の補完の目的であろうと思われるバスストップ（バス停）が，高速道路上にある。
高速バスといえば，昨今の高速バス網の拡大に伴って大都市と大都市をダイレクトに結ぶ路線のイメージが強く，「えっ，高速道路上にバス停があるの？」と思われる方もいるかもしれない。
そんな高速道路のバスストップの，路線バスのバス停とは一味違う魅力をマニア目線で書いてみたい。
クルマの聖域に立ち入りバスを待つ
高架や築堤にかかる階段を進み，高速道路と外界を分かつ重い扉を開けるとバスストップがある。高速道路のバスストップは高速道路上にあるので，クルマの聖域である高速道路上に否応なく生身の人間が立ち入ることになる*1。空港で飛行機に乗るために制限区域に入ったときのような無性に感じるワクワクを，高速道路にひっそりとあるバス停で味わえるのがいい。
バスストップは一般路線バスとは比べ物にならないくらい立派なバス停標識と待合室，プラットフォーム，それに喫煙所が備わっていて，ローカル線の鉄道駅と同等なくらいの設備になっているのも，バスストップであるからこその独特な感じがしてマニアごころがくすぐられる。
アクセス性の悪さもまた魅力
上記2枚の写真は，高速道路のバスストップの入口の写真。この時点ではバス停の影すらない。高架道路をくぐるガードは薄暗くて，夜中に歩こうものなら背後を気にせずにはいられない。
高速道路は，概して街の外れに走っている。一般的に，近世までの街道のまわりにできた「街」の外側に直線的な線形が必要な鉄道やバイパス道路が整備され，さらに大きな構造となる高速道路はもっと街の外側に作られる。そのため，高速道路上のバスストップはアクセス性がいまいちなところが多い。そのようなバスストップを好んで使う人は少ないし，利用者の少ないバスストップは最低限の維持管理しかされていないこともある。
だけれどもそんなバスストップを使っている乗客を見ることができたりすると，バスストップの使命を目の当たりにできた気がして，なんとなく嬉しくなる。
交通結節点や都市間輸送の拠点として
とはいえ，大都市に近く停車本数の多いバスストップでは，一般路線バスとの接続を図っていたり，バスストップの前にタクシーが待機していたりする。これもバスストップならではの，一般路線バスではターミナル等以外ではなかなかお目にかかれない光景だ。館山道に2019年に設置された富津浅間山バスストップ*2のように，高速バスとカーシェアの接続を図っているバスストップもある。
バスストップによっては，まさに鉄道駅並の機能を持つところもあった。東北道にある大鰐バスストップは大鰐温泉駅からほど近い，比較的便利に高速バスを使えるバスストップ。「東北大鰐駅」と称されたこのバスストップは，待合所兼出札も設けられ，盛岡などへ向かうバスのきっぷも発売していたらしい。しかし利用者が少なくなり，出札は今世紀初頭に廃止となってしまったようだ。
このような栄枯盛衰を目で見て知れるのも，構造が大きなバスストップだからこそなのかもしれない。
バスストップ沼？
上記で紹介したバスストップは全国数多あるバスストップの中のごくわずか。バスストップまでスロープカーでアクセスする神戸淡路自動車道の高速鳴門バスストップのように，自分が訪問していないだけで個性的なバスストップもあるらしい。バスストップ目当てに旅行することはあまりないが，そのようなバスストップの存在を知るとどうしても気になってしまうのがマニアの性である。
北条鉄道の終着駅「北条町駅」に近く，ショートカット乗り鉄にも活用できる。
都市間直行のバスではなく，バスストップに停車するようなローカル便のバスに乗って，バスストップで下車するとショートカット的に旅行行程がすっきりすることもある。今後もバスストップを活用して旅行しつつ，お気に入りのバスストップも探していきたい。
*1:バスストップから外に出ることは禁じられている
