きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

絶景の小笠原・父島 1泊4日旅行(前編)

 小笠原諸島は東京都心から南に約1000km離れたところにある国境離島です。小笠原への足は定期貨客船「おがさわら丸」のみで片道24時間かかります。おがさわら丸は東京を出て24時間かけて父島に到着後,3泊してから父島を出港,再び24時間かけて東京に戻るという6日サイクルのダイヤが基本。つまり小笠原に行くには1週間の休みが必要になります。 時間に余裕のある学生時代ならまだしも,小笠原に行くには安くない旅費がかかります*1。社会に出てお金に余裕が出てきても,今度は長い休みをとるのはハードルが高いです。

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東京から南に約1000km離れた父島への足は船しかない

 そんなわけでなかなか父島に行く機会がなかったのですが,今年(2021年)のおがさわら丸の時刻表をみていると,5月のドック期間前後だけ父島1泊のスケジュールに*2。ドック明けのほうはオフシーズンで金曜東京発土曜父島着・日曜父島発月曜東京着で,空いているのに連休前後に休みをとるだけで済みます。これは行くしかない,ということでおがさわら丸のチケットを取り,1泊4日で父島へ行ってきました。

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PCR 検査は任意だが,小笠原の人々を守るために必要なものだ

 なお,2020年に国内で新型コロナウイルス感染症が広まってから,医療体制の弱い父島に持ち込まないようにと,おがさわら丸の乗船者には PCR 検査が推奨されています。チケットの予約をするとしばらくしてから自宅に検査キットが送られてきて,検体を東京出航1〜2日前に郵送または竹芝桟橋に持ち込みする必要があります*3。   

おがさわら丸 東京→父島

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竹芝桟橋に停泊中のおがさわら丸(手前)。奥は東海汽船のさるびあ丸。

 出発当日,おがさわら丸に乗船する東京・竹芝桟橋へ。搭乗手続きをする際にはすでに「おがさわら丸」に貨物の荷役作業が行われていました。小笠原諸島と東京の間の物資は,危険物や島で出るゴミなど以外はすべておがさわら丸が輸送。旅客も貨物も小笠原は「おがさわら丸」頼りなのです。しかも今回はドック明けでしばらく小笠原への貨物輸送が滞っていたため,コンテナはデッキいっぱいに積載されました。

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おがさわら丸に積載されるコンテナ。

小笠原の人々が待望する物資が詰め込まれている。

 予約した席は「2等寝台」で,下から2番目に低い等級です。鉄道でいえばかつての開放 B 寝台のようなものですが,プライベート空間を確保できるので充分です。コンセントもあるので電子機器利用も安心。

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おがさわら丸の2等寝台

 おがさわら丸は竹芝桟橋を出航後,レインボーブリッジをくぐり,京浜工業地帯を眺め,多数の貨物船が行き交う浦賀水道を抜け,東京湾を出たあとは伊豆諸島の島々を眺めながらのクルージングに。片道24時間の船旅は退屈だろうと思っていましたが,景色を眺めたり,本を読んだり,眠たくなったら寝たりとしていればあっという間でした。ただし東京湾を出てから父島近くまでの21時間近くは,携帯の電波がなくネット断ちすることになります*4

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船上ではネットの世界から離れて,ひたすらのんびり過ごす

 翌日10時ごろ,聟島列島を過ぎたあたりで電波が復活し,半日分の Twitter タイムラインを確認(笑) 電波が復活するということは,父島が近い証。この日は20分遅れて11:20に父島・二見港に到着しました。

父島1日目 父島一周と森歩き

 到着後はすぐホテルにチェックインして荷物を預け,お昼ご飯を食べてから予約していた森歩きのツアーに参加。今回のツアーはガイドさんと初父島の我々のみだったため,クルマで父島の周回道路を一周し父島の地理を教えてもらいながら,景色のいいところに行ったり独自の生態系を観察できる森を歩いたりしました。

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小笠原の青い海が美しい。左は兄島(長崎展望台)

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傘山から見る父島の絶景

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父島固有の動植物を守るための森林

アカガシラカラスバトサンクチュアリ

 ツアーは4時間ほどでしたが,ガイドさんに父島の地理や地質,動植物やその生態など,色々と教えていただきながらピンポイントで名所を巡ることができました。普段の私の旅行スタイルでは自分でレンタカーや単車を借りて観光することが多いですが,この島は世界自然遺産であるがゆえにガイドさんなしでは入れない場所も多く,ガイドさんにいろいろと連れて行って様々教えてもらったほうが見応えのある観光ができそうです。

 小笠原の現地ツアーは大別して陸のアクティビティと海のアクティビティがあり,おがさわら丸の入出港にあわせて午前・午後のみプログラムも用意されているので,比較的柔軟に自分にあったアクティビティを体験できると思います。

 次の日は父島屈指の名所である南島へ。

(つづく)

*1:安くても10万円程度。学生の旅行先としては高い部類。学生時代の頃は若くお金が必要でした。

*2:2020年までは,1月がドック期間で,父島1泊はドック明けのみ

*3:郵送の場合,送料が5000円ほどかかるらしい。今回は竹芝桟橋まで持ち込みで対応した。

*4:伊豆大島沖や八丈島沖に入れば電波は入るが,八丈島から父島の間の15時間ほど完全にネットワークから絶たれる。