きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

SL人吉(熊本~鳥栖)乗車記

SL人吉 58654+50系客車3両+DE10

 2020年7月の豪雨によって肥薩線八代~吉松間は壊滅的な被害を受け,現在も不通状態になっている。肥薩線ではSL観光列車「SL人吉」が熊本~人吉間で運行されていたが,同列車も肥薩線を走れない状態が続いている。

 そこで JR 九州は肥薩線の応援企画として,熊本~鳥栖佐賀県)間で「SL人吉」を運転している。しかも5月から11月末までの毎土休日に運行*1と頻度が高めだ。先日,九州に行く用事があったので,熊本~鳥栖間で走るSL人吉に乗車してきた。SL人吉(の客車)に乗るのは,2020年に熊本~博多間で運転された「SL鬼滅の刃」に乗ったとき以来約2年ぶりだったので,「SL鬼滅の刃」との比較も楽しみつつ乗車した。

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 今回は鳥栖行きの「SL人吉」に乗車する。「SL鬼滅の刃」では熊本駅を8時台に発車と朝が早かったが,今回は10時台でゆったり。この日は東京から朝一番の飛行機で熊本空港へ行き,リムジンバスで熊本駅に向かったがそれでも余裕でSLに間に合った*2

熊本駅では見物客多め

 熊本駅で駅弁を買い込み,SL が入線する頃合いでホームに上がると沢山の子供連れの見物客が。「SL鬼滅の刃」のときほどではないがかなりの賑わいだ。SL をメインに記念撮影をしているところの横で,ちょっとした隙間から写真を撮らせていただく。

後ろからプッシュする補機には DE10-1638

 一方後ろから SL をプッシュする補機 DE10-1638 のほうは人気がなく閑散としていた。貨物会社では DE10 はすっかり数を減らしたようだし,旅客会社ではそもそも機関車を減らす潮流にあるので,国鉄型の DE10 ディーゼル機関車も貴重な存在になりつつあるのだが,そこまで把握しているのは鉄道オタクくらいである。

SL 人吉の客車内

 SL 人吉の客車は座席配置が独特だ。進行方向が固定された2人がけのシートと4人がけのボックスシートが混在し,なおかつ窓割りも座席によって当たりとハズレがある。SL 人吉は指定席券売機や各種ネット予約では座席が選べないので座席にこだわりがある場合は JR 九州公式サイト上の座席表や Google ストリートビューで確認しつつ,駅の出札窓口等で購入する必要がある。今回は乗車2週間ほど前の購入だったが,座席はかなり空いていて当たり席の指定席券を購入することができた。

DE10 側の展望席はガラガラ

 乗車してみると1ボックスそのまま空いている座席がいくつも見られ,乗車率は50%程度。観光地ではない熊本~鳥栖間の都市間での運転ということに加えて,2021年からの運行で SL 人吉の指定席料金が840円から1680円に値上げされていることは大きいだろう。

 たとえば,両親と小学生2人の4人家族で SL 人吉で熊本から鳥栖まで行くとしたら,運賃と料金をあわせて1万円を超える。食事や帰りのことを考えるとかなりコストパフォーマンスは悪い。実際,熊本駅で記念撮影して乗らずに見送る人や,父親と子供だけというファミリーも多く目についた。

  SL (蒸気機関車)は石炭や水の消費,消耗部品の交換などでとにかく維持費のかかる車両だと聞く。指定席料金を値上げするのは理解できるが,このままの乗車率ではせっかく値上げしたのに利用が乏しいままでは増収にはつながりにくいのではないだろうか……。

SL人吉の指定席券

 その反面,車内がひどく騒がしいことはなく,落ち着いてSL列車の旅ができたのは良かった。SL 列車は時速45km以下で運転するので車窓の外の景色もゆっくり眺められるのだが,沿線の住宅から手を振る住民の方々や踏切待ちをしているドライバーの SL を見て驚いた顔を見ると(「鬼滅」のときほどではないが)やはり特別な列車に乗っているのだと実感できる。SL の汽笛を聞きながら食べる人吉駅弁の「栗めし」もうまい。お値段以外は)気軽に乗れる SL 列車としては SL 人吉はもってこいなのかもしれない。

 鳥栖までの旅程は2時間半。鹿児島線沿いの住宅が並ぶ景色が続くので,車窓は肥薩線に比べれば単調だ。途中駅での長時間停車は玉名駅しかなく*3,駅のホームに下りて SL の写真を撮れるタイミングがあまりなかったので,基本的には座席で景色を見て過ごした。むかしの SL 列車での鉄道旅を想起しつつ,この日は朝が早かったのでうつらうつらと居眠りをしてしまい,気がついたら終点の鳥栖駅に到着していた。

*1:2022年9月時点

*2:乗車日時点。9月23日からは時刻が繰り上がるので難しくなるだろう

*3:2022年9月ダイヤ改正前の時点