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今回の旅行では,留萌で1泊とした。留萌本線は距離が短いので半日あれば往復できてしまうが,あえて留萌で宿泊して時間的な余裕をもたせた。冬の北海道は強い寒気がくれば平気で鉄道も道路も止まるので,悪天候で留萌にたどりつけなかったり,逆に脱出できなかったりしたことを考慮してのリスクヘッジだ。しかし実際には悪天候を心配する必要はまったくないほど,1日目も2日目も快晴だった。
沿岸バス 留萌別苅線 留萌十字街→旧増毛駅
2日目はホテルをチェックアウトして,まずは留萌十字街へ。十字街とはその街の開拓の起点になる中心地という意味で,北海道ではいたるところにその地名がある。留萌十字街も銀行や郵便局,市役所などが近くにある,名実ともに留萌の中心地で,バス路線も多くが経由している。この留萌十字街から沿岸バスに乗車して増毛へ。
バスは座席がうまる程度には乗客が多く,人口の少ない沿線でも生活路線として使われているのだなあと関心したが,実際にはほとんどが私と同じく旧増毛駅で下車し観光していたので,留萌本線のお名残乗車で乗車してきた人がそのまま増毛まで足を伸ばしただけのようだった。
増毛も規模が小さいが留萌と同じく港町で,かつてはニシンと海運で栄華を極めたが,現在は人口は激減し,ひとけは少ない。留萌本線も増毛まで運行されていたが,2016年に乗客減少により廃止されている。駅舎やホームはそのまま観光施設として残っているので,ちょっと見学。
旧増毛駅を出ると,明治期から大正期くらいの建物が目につく。最近のアニメ漫画だと『鬼滅の刃』とか『ゴールデンカムイ』とかに出てきそうな,いかにもレトロな街並み。増毛がニシンで栄えた頃の面影を残す,歴史の生き証人だ。
この日は帰りのバスの時間の関係で,増毛での滞在時間が30分しかない。旧増毛駅を出て街並みを見つつ急いで上写真右の國稀酒造に赴き,地酒を購入。最北の酒蔵という國稀酒造のお酒はここではいただかず,自宅に帰ってから幌加内そばと一緒に美味しくいただいた。
沿岸バス 留萌別苅線 増毛(増毛稲葉町1丁目)→留萌駅前
行きのバスと同じ車両が留萌行きとして折り返してそのまま帰ってきた。旧増毛駅で行きのバスと同じ顔ぶれの人たちを乗せ,日本海を眺めながら留萌へ戻る。この沿岸バス留萌別苅線は留萌本線の増毛廃止後の代替路線となっていて,バスの車窓からは雪に埋もれた廃線跡がなんとなくわかる程度に見える。
留萌本線 普通4926D 留萌→深川
留萌駅に到着後,留萌本線の列車に乗るのに1時間ほど余裕があるので,駅舎内にある立ち食いそば屋でにしんそばをいただく。留萌駅のにしんそばは前回留萌まで来たときもいただいたもので,にしんそばの味が忘れられず留萌本線が廃止になる前にもう一度食べたいと思っていたグルメ。そば自体は普通だが,そばにのったニシンは甘く柔らかく煮込まれていて,これがツユとからむととてもおいしい。駅の待合室の片隅で暖簾をさげて営業している風情もよい。
いっときは観光客や鉄道マニアだけでなく,鉄道を利用しない地元の方と思しき方もそばをすすっていたので,地元にも愛されている店なのだろう。駅がなくなったあともどこかで営業を続けていただきたいものである。
食べ納めをしたところでいざ列車へ……と思いきや,留萌に来る列車が特急との接続待ちで20分ほど遅れて来るとのこと。待合室の展示物などを見ながら気長に待つ。
留萌駅にはみどりの窓口があるので,遅延を見越してあらかじめ取っておいた深川からの特急の指定席を変更しておく。窓口の上には札幌と新千歳空港への乗継時刻表が貼られていて,都市間・空港輸送を意識した営業を行っていたようだが,残念ながら成果は実らず今年の3月には廃止になる。
ようやく列車が到着。1日目とは違いキハ150系での運転だ。進行方向左手窓側の席を確保し写真を撮っておく。
2日目は3連休の中日ということで,行きの倍以上の通路までいっぱいになるほどの乗客がいた。
行きとは違う方向の車窓を見れるので,行きでは見られなかった駅たちも列車から眺めることができた。藤山も幌糠もJR調査の乗車人員は1名以下だが,この日は駅巡りをしているのか何人かこれらの駅から乗車するのを見かけた。
峠下をこえて恵比島への峠越えは,晴れていたこともあって相変わらずきれいな車窓だった。エゾマツ(?)に新雪が乗る車窓は,北海道であればほかのところでも見られるかもしれないが,この景色を列車から見られるのがこの冬限りだと思うと名残惜しいものがある。
留萌から1時間弱の旅を終えて,深川駅に到着。車両は4927Dとして留萌へ折り返すのだが,遅れが回復できていないため慌ただしく発車。留萌へ戻るキハ150を眺めつつ深川駅を後にした。