特急「草津」は上野~長野原草津口を結ぶ列車で,伊香保温泉(渋川)・四万温泉(中之条)・草津温泉(長野原草津口)といった有名温泉地を抱える吾妻線沿線へ行楽客を輸送する役割がある。
私は温泉好きで特に草津温泉には何度も足を運んでいて,草津温泉へのアクセスとしてこの特急「草津」も何度も利用している。
特急「草津」は2023年3月のダイヤ改正で車種が651系からE257系へ,列車名も「草津・四万」へ変更となる。651系の乗り納めもしつつ,伊香保温泉への交通手段として,特急「草津」に乗車してきた。
特急「草津」1号 大宮→渋川
今回は特急「草津」1号のグリーン車の座席を押さえた。列車は上野始発だが,大宮から乗車すれば下車地の渋川まで100kmを切るので,料金が2000円ほど割安になる*1。私の JR 最寄り駅は横浜駅だから,上野から乗るにしても大宮から乗るにしても所要時間の長さや乗り換えの煩わしさはさほど変わらない。
温泉が恋しくなる冬ということで,群馬の温泉地はトップシーズン。そのためこの日の特急「草津」1号は平日であったにもかかわらず指定席・グリーン車ともに満席。そして自由席もいっぱいであると列車が到着する直前に駅員よりアナウンスが入る。自由席でいいやと思っていた人はそこで告知されても困るだろうに……。
私は意欲的な設計で生み出された1990年前後の鉄道車両が好きだ。先日乗り納めしたキハ85系も1988年生まれである。今回乗車する651系もキハ85系と同じ1988年生まれで,グリーン車は1+2列の3列シート。背中にフィットしつつも深く倒れるリクライニングシートで,651系のグリーン車はお気に入りの座席である。
満席ではあるものの,グリーン車というだけあって車内は静かだった。最後の651系特急「草津」を落ち着いて満喫することができた。
自由席はどのくらい混んでいるのだろうと思って見に行くと通路までいっぱいだった。あふれた自由席客は指定席やグリーン車のデッキまで溢れていた。特急「草津」の座席定員の少なさゆえか,それとも冬の温泉地の吸引力の強さゆえか。
1時間ほど乗車して渋川で下車。伊香保方面に行く利用者かはわからないが,それなりの旅客が特急「草津」から下車して渋川駅の改札まわりはにわかに混雑した。特急「草津」1号に接続する関越交通バスの急行便で伊香保温泉へ向かった。
大きく変わる特急「草津」
2023年3月改正で特急「草津」は大きく変わるので,変更点を以下にまとめる。
名称が「草津・四万」に変更になる。中之条駅最寄りの四万温泉の名前が入ったが,四万の読み方は旅行慣れした人でないと読みにくいだろう。あと,同じく沿線にある伊香保温泉はお呼びではないということだろうか?
また,車種の変更により2両減車となるが,運行本数はそのままとなっているためダイヤ改正により単純に輸送力が小さくなる。さらに全車両が指定席となり,グリーン車および普通車自由席は設定が無くなる。特急「踊り子」や,特急「草津・四万」と同じ経路を走る特急「あかぎ」*2のような「新たな着席サービス」が導入されないので,自由席利用者にとっては単純な値上げである。
なお,繁忙期を中心に臨時列車*3が運転される。現時点ではダイヤ改正前より運行日数を多めになっているように見えるが,この臨時列車によって輸送力の調整するものと思われる。
臨時列車を含めても特急「草津」は4往復しかなく,下りの午前・上りの午後にそれぞれ1時間に1本あるかないかという運行本数で,減車かつ全車指定席となると冬や夏のトップシーズン中は満席の列車が続出しするのではないだろうか? 吾妻線は普通列車の本数も多くないし,列車を補完するJRバス関東「上州ゆめぐり」号などの高速バスにも座席の限りがある。閑散期や平日は問題ないのだろうが,トップシーズン中は公共交通で草津温泉に行きにくくなるかもしれない。
バスと違って輸送力が大きく,「取りあえず乗れれば目的地に行ける」のも鉄道の強みである。特急「草津・四万」については今回のダイヤ改正でその強みを自ら捨てているように思える。JR東日本は自由席がある特急の全車指定席化を進めているので「草津・四万」だけに限った話ではないが……。