前回の記事の続きです。
八幡平のドラゴンアイを見る
藤七温泉から徒歩で八幡平見返峠に到着したその足で,ドラゴンアイが見られる鏡沼へ。見返峠にある駐車場から遊歩道を徒歩10~20分ほど。この日はドラゴンアイの見頃だというニュースもすでに出ていたので,かなりの人出になっていました。
梅雨入り間近で天気が悪くなりがちな時期で,この日は麓の天気は良かったものの八幡平の頂上は雲の中。八幡平のドラゴンアイは雪解けにより「開眼」していて見事な景観でしたが,日差しがなかったのできれいな色が出ずその点だけは残念でした。
鏡沼は八幡平の噴火によってうまれた火口湖のひとつで,鏡沼に隣接して段々畑のように同じような池が並んでいます。が,ドラゴンアイのような雪解けになるのは鏡沼だけとのこと。実に不思議です。
羽後交通バス 急行八幡平線 八幡平頂上→後生掛温泉
見返峠まで戻って,八幡平山頂レストハウスで休憩したら,レストハウスの駐車場にある「八幡平頂上」バス停へ。ここは岩手県を営業エリアとして盛岡などから来る岩手県北バスと,秋田県を営業エリアとして田沢湖から来る羽後交通バスのそれぞれの終着駅。県境の峠にあるバスターミナルらしく2社のバスが並んで休む風景も見られました。
ここからは,羽後交通バスの田沢湖駅前ゆきに乗車。田沢湖と八幡平を結ぶ急行八幡平線は1日2往復のみの運転。こちらのバスも10人程度の乗車。なかなかさみしい状態です。
田沢湖ゆきは八幡平を下って蒸ノ湯温泉,大深温泉,後生掛温泉……と八幡平に点在する秘湯の温泉場に寄っていきます。秘湯の温泉場は路線バスでたどり着けないところも多く,これほど秘湯に止まるバスも珍しい。
これらの温泉場はそれぞれとても魅力的であるものの,残念ながらバスの本数が少なすぎるのである程度絞っていかなければなりません。蒸ノ湯温泉などは車窓から見るだけにして,八幡平頂上から3つめの「後生掛(ごしょがけ)温泉」で下車。
バスを降りて徒歩5分ほどで温泉の一軒宿へ。ここは自炊部(湯治部)もある有名な湯治場ですが,クルマ利用の外来入浴客でかなり賑わっていました*1。
こちらもお風呂は白く濁った単純硫黄泉で,しかも「神恵痛の湯」「火山風呂」など入り方によって種類がたくさんあるのは面白かったです。狭いながらも湯治客向けのぬるい「泥湯」もありました。
温泉を満喫したら,宿を出てバス停とは逆の方向へ。ここには「後生掛自然研究路」があり,宿の裏手にある地獄地帯を散策します。赤みがかった地面が広がる荒涼とした風景の中,湧出する温泉や吹き出す泥,泥火山などいろいろな火山現象が見られます。泥が吹き出す地帯では「ボコッ……ボコッ……」と火山ガスが泥とともに吹き出すときの不気味な音だけが静かに響く。研究路の途中には新たな泥の吹き出しによって遊歩道が付け替えられたり,寸断されたりしているところが至るところにあり,地熱の力強さを否応なく感じられます。
墳泥がボコボコしているのを見るだけの動画 pic.twitter.com/zN0esKYTOt
— あしがらさん (@ashizin) 2021年6月12日
温泉の賑わいとは裏腹にこちらはほとんど人はおらず。珍しい現象がたくさん見られるところなのにここに立ち寄らないのはもったいない。
羽後交通バス 急行八幡平線 後生掛温泉→玉川温泉
後生掛温泉のバス停に戻って,2便目のバスに乗り込みます。八幡平からの田沢湖行きはこれが最後。とはいえ5人も乗っていないほど,閑散としていました。
後生掛温泉から30分弱で玉川温泉へ。こちらで下車して玉川温泉に向かいます。玉川温泉でバスを降りると宿の方が出迎えてくれますが,泊まりでもないうえに夕方で日帰りの時間は終わっているので申し訳無さそうに「見学だけ」と言うと,そういう人も少なくないのか,宿の方には愛想よく対応していただけました。
玉川温泉も地熱が高く,硫黄で黄色くなった噴気孔から勢いよく蒸気が吹き出る地獄地帯をもつ温泉です。こちらはその地熱で岩盤浴も有名で,歩道に手をおくと日陰でもかなり熱いことがわかります。灰色の地からジェット音をたてて各所から蒸気が噴き出すさまは,まさに地獄。
玉川温泉は日本一酸性度の高い温泉としても有名です。その水素イオン濃度は ph1.2 とレモン汁や胃液よりも強い。しかもそれが98℃の熱湯で毎分8400Lも湧き出すという。考えてみてほしい,家庭用のバスタブなら2秒程度でいっぱいになってしまう量の,胃液よりも強い熱湯が湧いて出ているのである。やばすぎる。
ph1.2で98℃の強酸性の熱湯が毎分8400L出ている様子。ヤバすぎる pic.twitter.com/gGYhz6HXL8
— あしがらさん (@ashizin) 2021年6月12日
そんな景色もここ玉川温泉では遊歩道から間近に見られる。玉川温泉に入浴することはできませんでしたが,この景色を見られただけ満足でした。
ちなみに玉川温泉は地中から放射線がでており,科学的根拠はないもののがんに効くなどとして癌患者の湯治客が集う温泉場でもあります。この日も歩道上や歩道脇などで湯治をしている人を見かけ,こういったところも玉川温泉らしい景観になっています*2。
羽後交通 急行玉川線 玉川温泉→田沢湖駅前
玉川温泉から田沢湖方面は,区間運転の系統が複数便あり,こちらの便で田沢湖駅を目指します。玉川温泉を出たら新玉川温泉などによりつつ,一路南下して田沢湖へ。
バスは駅へのメインルートをはなれて田沢湖のほとりへ。バスの車窓から夕日に染まる田沢湖の姿が見えました。朝早く起きてバスを乗り継いできただけあって感傷に浸る瞬間です。
玉川温泉から1時間ほどで田沢湖駅に到着。朝6時にホテルを出て18時まで,徒歩もはさみつつほとんどバスに乗りっぱなしでしたが,バス旅と素晴らしい秘湯たちとの出会いには満足でした。
*1:バスから降りたのは私ともうひとりだけだったのに……
*2:NHK の『ドキュメント72時間』で玉川温泉に集う癌患者をテーマにした回がある。この番組の中では個人的にはかなり好きな回だ。