きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

「旅せよ平日!JR東日本たびキュン♥早割パス」で秋田の秘湯温泉へ日帰り旅行に行く

 JR東日本で発売されている「旅せよ平日!JR東日本たびキュン♥早割パス」(以下,キュンパス)は,JR東日本全線と一部の私鉄の普通列車および特急列車の自由席が平日1日乗り放題の特別企画乗車券だ。さらに2回の指定席も利用することができる。発売条件は「えきねっとで利用日の14日前までに購入すること」のみであり,早割とあるが発売枚数制限等は無い。2024年2月14日~2024年3月14日の平日利用分のみ発売されている。

 価格は10,000円。東京から東北新幹線で北上する場合,片道なら東京・仙台間(定価:10,890円),往復なら東京・那須塩原間(定価:11,640円)を利用するだけで元がとれてしまう。

「旅せよ平日!JR東日本たびキュン♥早割パス」

 今回私はこのきっぷを使って横浜から秋田にある秘湯・乳頭温泉鶴の湯まで日帰り旅行へ行ってきた。

始発の新幹線で盛岡へ

 キュンパスは発売開始初日に購入。指定券もキュンパスの購入と同時に取得した。

 そもそもキュンパスを購入した当初の理由はこのきっぷで秋田の秘湯に行きたかったのではなく,岩手・八幡平のスキー場にスノボに行くためであった。そのため,指定券も朝晩の東京~盛岡間の往復を取得していた。しかし2月なのに春一番が吹くなど異常なほどの高温で,スキー場は雨のようす。そこで嫁から乳頭温泉に行きたいというリクエストがあったのを思い出したのと,これとは別に週末にもスキー場には行く予定だったので,スノボは早々に諦めて乳頭温泉に行くことにした。急な行程変更になるがフリーパス利用なので柔軟が効く。

 指定券は朝一番の「こまち」1号を取っていたので,温泉に行くには早すぎる。午前中は盛岡市内を観光することにして,予定通り盛岡まで乗車する。

早朝の東京駅

 地元の横浜駅からキュンパスを利用開始して,東海道線で東京駅へ。早朝の東京駅は,キュンパスを持っている人を多数見かけた。平日(水曜日)早朝の列車なのに「いかにも旅行に行く人」は駅でも列車内でもやけに多く,ほとんどがキュンパス利用者だろうと想像される。この日の「はやぶさ」「こまち」1号は満席だった。

鉈屋町の町並み

 盛岡駅に降り立ったあとはスノボ板を積むために予約していたやけに大きなカーシェア車両に乗って,盛岡市内へ。有名な福田パンコッペパンをいただき,盛岡駅から2キロほど離れた鉈屋町に行って古い町家の町並みを歩き,豊富な水資源に由来する共同井戸を見学したり地酒「あさ開」の酒蔵で日本酒を購入するなどした。酒蔵に行くなら試飲するのだから,クルマではなくバスで行けばよかったと後悔した。

盛岡から新幹線とバスを乗り継いで乳頭温泉

 昼食に盛岡冷麺をいただいてから,昼過ぎの「こまち」で田沢湖駅へ向かう。「こまち」は全車指定席だが,盛岡~秋田間は自由席と同額の特定特急券で空いている席を利用できる。キュンパスでもこの区間は指定をしなくても追加料金不要で空いている席が利用可能だ。今回はキュンパスを使って指定なしで空いている席を利用しようとしたが,昼間の列車でも2人並びで空いている席は無く,通路側に縦並びで利用することになった。盛岡から田沢湖までなら30分程度なのでどうということはない。

田沢湖駅で下車

 田沢湖駅で下車。キュンパス利用はいったんここまでとなる。田沢湖駅から羽後交通バス乳頭温泉行きに乗り換え,「アルパこまくさ」まで乗車。羽後交通バスでは交通系 IC カード等は使えないが,PayPay など QR コード決済が使えるようになっていた。

「アルパこまくさ」で乳頭温泉行きバスから送迎バスに乗り換え

 「アルパこまくさ」では今日の目的地乳頭温泉鶴の湯への送迎バスが待っている。このバスに乗り換えて,細い山道を10分ほど走れば鶴の湯に到着だ。

乳頭温泉鶴の湯の混浴露天風呂*1

 乳頭温泉鶴の湯は言わずとしれた有名な秘湯である。雪景色が美しい茅葺き屋根の長屋「本陣」の眺めもよいが,やはりお目当ては硫黄系の白く濁った掛け流しの温泉だ。冬の鶴の湯はややぬるくなるらしく,内風呂も露天風呂もさほど熱くない。混浴露天風呂は足元からプクプクとお湯が湧くが,体温より少しあたたかい程度のぬるさで,無限に浸っていられるほど気持ちが良い。送迎バスの折り返しまでの1時間,ゆっくりとお湯に浸かった。

 帰りも,田沢湖駅から「こまち」に乗車。盛岡駅で下車してじゃじゃ麺を食べてから,指定券をとっていた「こまち」で帰京した。

旅行後記

 キュンパスを利用して横浜~田沢湖間を新幹線を使って往復した。距離にして約1200km,費用は通常なら運賃・料金だけで単純計算で3万円以上。新幹線を使うことでの時短と一人2万円以上の割引額は大きい。また,フリーパスのため急な行程変更にも柔軟に対応できた。

 仮にキュンパスが無くても乳頭温泉への旅行で新幹線を使って往復したかといえばそうは考えない。キュンパスが無いなら,盛岡まで夜行バスで行くとか,秋田まで飛行機を使うとか,はたまたマイカーでのんびり行くとか,スケジュールや費用と相談しつつそういうことを考える。そもそも私は昨今のサービス低下や安全意識の低下が著しいJR東日本に対してネガティブな印象しかないので,値段の高い新幹線で日帰り往復するなどまずありえない。キュンパスを使うことで一人2万円引きで旅行できるならJR東日本に文句は言わまいと,目を瞑った形である。

夜の盛岡駅

 今回のキュンパスの発売は,テレワーク等の普及でビジネス利用が減った平日と,旅行需要の高い土日の利用を平準化させるための旅行喚起策であろう。キュンパスを使って駅や列車で見たのは同じくキュンパスで旅行する人たちの姿であった。「格安で特急乗り放題」というのはわかりやすく,注目度も高い。この1ヶ月間のキュンパス発売実績をふまえて,JR東日本は次にどのような手を打つのだろうか。


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