きっぷ片手に旅をする

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パノラマ特急の旅(2) ~HOT7000系特急「スーパーはくと」最前列に乗る~

 前回の記事の続き。

ashizin.hatenablog.com

 米子で下車したあとは,山陰線の上り普通列車に乗り換えて東へ。時折見える山陰の日本海の景色を眺めつつ,向かう駅は倉吉駅だ。

HOT7000系 特急「スーパーはくと」10号@倉吉

 倉吉駅からは特急「スーパーはくと」10号京都行きに乗車する。特急「スーパーはくと」で運用されているHOT7000系も,流線型の先頭車両を使用した前面展望が楽しめる車両である。特急「スーパーはくと」は5両編成で,京都方の先頭車両が普通車指定席,倉吉方の先頭車両は普通車自由席*1で,パノラマグリーン車の381系「やくも」に比べれば最前列での前面展望が楽しみやすい列車だろう。

 なお,運用上の都合で前面展望が楽しみづらい貫通型の車両が先頭車両に入ることもあるらしいが,流線型先頭車両の検査や車両工事が行われるときの予備車としての運用となるため,こちらも時刻表等にあらかじめ記載されることはない。

 「やくも」と同じようにこちらも貫通型車両が来ないかと不安になったが,無事に流線型車両が先頭に立っていた。

特急「スーパーはくと」10号の特急券

 今回乗車するのは先頭車両最前列となる5号車1番D席である。しかし実際に私が座っていたのはC席である。予備車である貫通型車両が先頭車両として入ると,5号車1番C席にあたる座席がないため,流線型車両であっても,きっぷ予約時のシートマップで見ると5号車1番C席は常に「発売済み」となる。そのため,5号車1番D席のきっぷを持っていれば,実際にはC席とD席をひろびろ使えるというわけだ(5号車1番C席は調整席として使われていると思われるので,利用の際は車掌の指示に従いましょう)。5号車1番D席は前面展望ができるだけでなく,ゆったりと座席利用ができる「スーパーはくと」の超当たり席である

最前列付近の様子。視界は良好。

 最前列からの景色がこちら。381系「やくも」よりもフロントガラスの高さがありガラス面積も大きいことから,「やくも」より視界は良好だ。

特急「スーパーはくと」10号 倉吉→京都

特急「スーパーはくと」路線図*2

 倉吉を発車すると,山陰本線を走って鳥取へ向かう。単線非電化の山陰本線であるが,「スーパーはくと」はぐんぐんと速度を上げ,110kmくらいで走っているようだ。定尺レールでお世辞にも規格の高さを感じない山陰本線を初っ端からぶっ飛ばしている。力強いディーゼル音や激しいテンポで響くレールのジョイント音が,否応なしに「この列車は速いぞ」と体に伝えてくる。

 さっそく車掌が回ってきたが,智頭急行の係員だった。智頭急行はこの先の智頭~上郡間で通過する社線だが,車掌は越境して倉吉まで乗務しているらしい。きっぷに捺印された智頭急行のスタンパはこのとき頂いたものである。

 鳥取に到着すると主にビジネスマンの風貌の乗客が多数乗車してきて,5号車はほぼ満席状態に。自由席はさらに混雑しているかもしれない。夕方上りの列車とはいえ,平日ながら思った以上の利用があって少し驚いた。鳥取京阪神地区を直結する「スーパーはくと」は旺盛なビジネス需要を取り込んでいるようだ。

130km 近いスピードで走る

 因美線を経由して智頭に到着すると,ここで運転士も智頭急行の係員に交代となる。智頭急行線は陰陽連絡を目的として鉄道公団が建設したのち,国鉄末期に建設凍結したものを第三セクター方式で1994年に開通させた路線である。130km運転による優位性を確保することを目的に,開業当初から高規格な路線となっている。

 智頭急行線はほとんどが高架橋や盛土,トンネルになっていて,踏切は少なくカーブは緩やか。ここぞとばかりに本領発揮する「スーパーはくと」は,120kmを超えても加速し続け,130km弱で巡航している場面も。カーブは緩やかだといっても高速度で減速せずカーブに突っ込んでいくのは最前列で見るとヒヤヒヤするのだが,カーブに入るとともにクッと車体が大きく傾き,カーブの終わりと同時にスッと車体が戻るキビキビとした振り子制御になっていて,まるでバイクにでも乗って峠道を走っているかような爽快感がある。

 上郡で運転士と車掌が交代し,再び JR 線内へ。上郡で振り子制御は解除されるが,もとより新快速電車が130kmで走る山陽本線である。「スーパーはくと」も最高速度 130km でぶっ飛ばす。

山陽本線を130kmで走る「スーパーはくと」。スピード感満点。

 京阪神都市圏に入り並走して走る電車も増えてくるなか,「スーパーはくと」は複々線の外側を快走する。三宮や大阪でまとまった量の乗客をおろしつつ,何本かの普通電車を追い越しながら,列車はやがて終点の京都駅に到着。倉吉から3時間以上たっていて外はすでに真っ暗になっていたが,前面展望を思いっきり楽しむことができて満足だ。

京都駅に到着

乗車雑感

 381系「やくも」パノラマグリーン車に乗ったあとだったので,どうしても「やくも」と「スーパーはくと」の乗り比べをしたくなるのだが,この2列車で比較するなら「スーパーはくと」に軍配が上がる。足元からの力強いディーゼルエンジンの音,キビキビとした振り子制御,視界の広いフロントガラスなど,「スーパーはくと」のほうが最前列で前面展望を見ていて楽しかった。

 「スーパーはくと」は大阪万博の開催にあわせて,運行形態の変更や車両更新の噂がある。2024年春のダイヤ改正では,京都発着の列車が大幅削減される代わりに1往復増便されるほか,全車指定席となる予定だ。前面展望ができる特急列車に興味がある方には是非いまのうちに楽しんでいただきたい列車である。


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*1:2024年春のダイヤ改正から全車指定席となる予定

*2:JRおでかけネットより引用