きっぷ片手に旅をする

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感動のさよなら放送。特急「ダイナスター」4号ラストラン乗車記

 2024年3月16日の北陸新幹線(金沢~敦賀)延伸開業により,北陸本線を走る「サンダーバード」「しらさぎ」は敦賀までの運転,「ダイナスター」などは運行終了となった。

 私はこの前日の15日に,最後の北陸特急乗車と最初の北陸新幹線乗車を目的に,金沢を訪問した。鉄道マニア歴はそれなりに長いが,私が列車のラストランを見に行くのは寝台特急「富士」「はやぶさ」以来である。今回の北陸新幹線敦賀延伸のあと,新幹線の新規開業はリニア中央新幹線北海道新幹線幌延伸くらいまで無さそう。北陸特急には思い入れもあるし,まあ行ってみるかと思ってみた次第である。

熱気にあふれる北陸本線金沢駅

 2024年3月15日の夜。ホテルから出て金沢駅へ。私が乗車するのは最終運行となる特急「ダイナスター」4号福井行きである。

金沢駅にある北陸本線へのメッセージカード

 金沢駅に到着する直前に金沢から大阪へ直通する最後の特急「サンダーバード」50号が発車していったこともあり,北陸本線金沢駅の最期を見届けようというマニアの熱気で溢れている。

たくさんの人に見送られる「おやすみエクスプレス」

 特急「おやすみエクスプレス」敦賀行きが発車していく。次に入ってくる列車が特急「ダイナスター」4号。この列車が最後に金沢駅を発車する北陸本線の特急列車だ。

特急「ダイナスター」4号 金沢→福井

 特急「ダイナスターは金沢~福井間を朝夕のみ運行する短距離の特急列車だ。2015年の北陸新幹線金沢延伸開業に伴い,越後湯沢~福井間を運行する在来線特急「はくたか」の金沢以西を代替する列車として登場した。そして2024年,北陸新幹線敦賀延伸開業に伴って廃止される。北陸新幹線の延伸開通とともに運命を共にした列車である。

ダイナスターのラストランを表示する発車標

 「おやすみエクスプレス」が発車後,駅の発車標に特急「ダイナスター」4号が表示される。この発車標が北陸本線を表示することもあとわずかということで,かなり多くの人がこの発車標を撮影していた。特急「ダイナスター」の発車案内には,こんなメッセージが添えられていた。

北陸新幹線金沢開業とともに運転を開始した特急ダイナスター号は、本日をもって運転終了となりその役割を北陸新幹線のつるぎ号に引き継ぐこととなります。今までのご利用ありがとうございました!

多くの人に見送られる特急「ダイナスター」4号

 やがて金沢駅に特急「ダイナスター」4号が入線してきた。乗車まで10分ほどあるので,反対側のホームからなんとか撮影。いろいろな画角で撮ってみたが,引きの構図で最終日で多くの人に撮影される様子をアップしてみる。

特急「ダイナスター」9号車自由席

 特急「ダイナスター」は通常6両編成であるが,この日は米原方に3両増結された9両編成で運転された。事前に予告がほとんど無かったため,自由席目当ての乗客は通常の5号車・6号車に乗車しており,増結された7号車~9号車はラストランにも関わらず空席多数となっていた。

特急「ダイナスター」4号に乗車

 発車時刻が近づいてきたので特急「ダイナスター」4号に乗車する。今回乗車するのはグリーン車である。この日の特急「ダイナスター」4号は普通車・グリーン車ともに指定席は満席であった。

 金沢駅のホーム上にある乗車案内からはすでに「サンダーバード」「しらさぎ」の列車名が消えている。

グリーン券と記念乗車証 / まもなく終点福井駅

 列車は定刻で金沢駅を発車し,一路福井へ。この日は車掌が3名乗車していて,うち1名は移管されるハピラインふくいの制服を着用して乗務されているとのこと。乗車していたグリーン車まで巡回に来ることは無かったが,移管直前らしい風景だっただろう。

 車掌から記念乗車証をいただくついでに,特急券に入鋏していただく。乗務員が所属する福井運転センターはこの日をもって廃止となるので,このスタンパが使われるのもこれが最後だろう。

 特急「ダイナスター」4号は軽快に北陸本線を走り,最後の途中駅である芦原温泉駅を発車。発車後,約7分にもわたるさよなら放送が行われた。このさよなら放送がかなり感動的だったので,ここに文字起こしをしてみる。

 あと9分ほどのご乗車で,このラストラン列車は終点福井に着きます。
 特急「ダイナスター」号は,2015年3月14日の北陸新幹線金沢開業にあわせ,金沢から福井駅間の朝と夜の時間帯に,通勤・通学の列車として,また北陸新幹線との連絡列車としての使命を持ち,本日まで9年間,運転をしてまいりました。
 ここ数年は自然災害による輸送障害が多く発生し,福井エリア豪雨災害で北陸線の線路が流された際や,自然災害などで「サンダーバード」号「しらさぎ」号が運休になった場合などの代替列車として,急遽,臨時列車としての使命を担うこともありました。また,運転できる範囲に応じて,ときには敦賀行きとして運転するなど,臨機応変な運転を行ったことから,救済臨という別名もありました。
 「ダイナスター」号の名前の由来は,福井方面へのアクセス列車ということから,福井県の観光資源・恐竜の英訳「ダイナソー」と,地元の期待の英訳「スター」の英訳を組み合わせたところから来ています。長距離列車のような華やかさはありませんでしたが,地域に期待され,主に地元の足として,多くの方に愛されご利用いただいたこの特急列車も,明日からはその役目を北陸新幹線IRいしかわ鉄道・ハピラインふくいに引き継ぎます。運行に携わったグループ会社を含めた関係者,すべての社員を代表して,お礼を申し上げます。長らくのご愛顧,誠にありがとうございました。
 いままで1日2往復,このダイナスター号の乗務を担当していた金沢列車区と福井運転センターの乗務員も,職場がIRいしかわ鉄道・ハピラインふくいに移管されるため,JRに残る者も含め,それぞれが別の進路に進むこととなります。本日この列車を担当させていただいた車掌が所属する福井運転センターも,明日からはハピラインふくい運転管理センターへと生まれ変わります。本日運転を担当させていただいた私も,この列車の乗務を終えたあとは職場に戻り,JR西日本乗務員として最後の乗務報告を行い,明日からはハピラインふくいの制服を着ることとなります
 皆様に愛されたこの北陸線に乗務した誇りを胸に,乗務員一人ひとりが,それぞれの職場で引き続き乗務して参りますので,明日からも北陸新幹線IRいしかわ鉄道・ハピラインふくいのご利用をどうぞよろしくお願いいたします。

(中略)

 ご乗車ありがとうございました。まもなく,このラストラン列車は,終点福井に着きます。お出口は右側です。乗り換えのご案内をいたします。

(中略)

 北陸新幹線金沢開業と同時に運行を開始したこの「ダイナスター」号ですが,運行開始してから9年間,私の記憶の中ではこんなに多くのお客様にご利用いただいたのは初めてと思います。先程も申し上げましたが,ダイナスター号は運転する時間帯が朝と夜ということもあり,金沢と福井エリアをつなぐ,地域密着型の特急列車でしたので,華やかな話題が多い観光型列車とは違う使命をもつ列車でした。
 終点福井の到着をもちまして無事に役目を終えようとしていますが,最後の最後にこんなにもの多くのお客様にご乗車いただきお見送りいただけていることに,乗務員一同,心からお礼を申し上げます。この68ろっぱー系列車が北陸線金沢から敦賀駅間を走行することはもうありませんが,明日から大きく変わる北陸エリア・福井エリアにどうぞご期待ください。

 きょうもJR西日本特急「ダイナスター」号をご利用いただきましてありがとうございました。まもなく終点福井に着きます。お出口は右側です。

 特急「ダイナスター」号の生い立ちと,北陸新幹線に役割を引き継いだ後のこれからについて,そして特急「ダイナスター」と乗客への感謝を込めた素晴らしいスピーチで,放送に耳を傾けていて私は思わず涙腺が緩んでしまった。隣に座っていた乗客の方も同様に涙ぐんでいた。放送していた車掌も少し涙声になっていた。

福井駅に到着。列車はそのまま西へ

 特急「ダイナスター」4号は無事に福井駅に到着。とてもすがすがしい気持ちで福井駅に降り立った。


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