きっぷ片手に旅をする

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パノラマ特急の旅(1) ~381系特急「やくも」パノラマグリーン車最前列に乗る~

 昨年11月,JR西日本エリアで走るパノラマ列車に乗るための旅行をしてきた。乗車するのは岡山~出雲市間を運行する381系「やくも」パノラマグリーン車と,京都~倉吉間を運行するHOT7000系スーパーはくと」である。

 この記事では381系「やくも」パノラマグリーン車の乗車レポをお届けしたい。

特急「やくも」381系とパノラマグリーン車について

 特急「やくも」で運用される381系は国鉄時代に開発された振り子式の特急電車だ。その一部の編成の出雲市方先頭車両がパノラマグリーン車といわれる,先頭車両の運転席後ろをガラス張りにして前面展望を考慮したタイプの車両となっている。

 かつて381系は「しなの」「くろしお」などで運行されていたが,それらの列車は新型車両に置き換わり,現在の運用は「やくも」のみ。この「やくも」についても今春以降,381系から新型車両の273系*1に順次置き換わる予定だ。しかも,381系は国鉄形特急電車の最後の生き残りであるという。そのため,日本では唯一の国鉄型特急列車で,なおかつ一部の列車でしか設備されていない前面展望が可能なパノラマグリーン車は,特に注目度が高くなっている。

 特急「やくも」のパノラマグリーン車は,乗車時点で以下の列車で運用されている。パノラマグリーン車が先頭になるのは下り列車だ。

下り「やくも」3・5・17・21号
上り「やくも」2・4・16・20号

 パノラマグリーン車が組み込まれた381系は2編成しかないが,上記の運用をこなすには2編成必要。つまり検査などでパノラマグリーン車が組み込まれた編成が運用に入らない場合は,せっかくパノラマグリーン車の列車の特急券がとれても,パノラマではないグリーン車が充当される可能性がある。時刻表にも,「パノラマ型でない日があります」とただし書きがあるが,それがいつなのかは明記されない。

特急「やくも」5号 岡山→米子

 今回乗車するのは特急「やくも」5号で,行程の都合で途中の米子駅まで。特急券は e5489 で予約した「WESTERポイントアップグレードチケットレス(グリーン)」。1000ポイントと引き換えにグリーン料金は0円でグリーン車に乗車できる商品だ。チケットレスなので発券不要だが,紙きっぷのオタクなので駅でわざわざ発券してもらっている。

「やくも」5号(パノラマグリーン車)の特急券・グリーン券

 この日は早朝から岡山にいたので,同じくパノラマグリーン車編成が充当されるはずの「やくも」3号の様子を見てみたところ,"パノラマ型でない"車両で運用されていた。私が乗車する「やくも」5号もどうなるかとヤキモキしたが,無事にパノラマグリーン車つきでやってきた。復刻塗装のスーパーやくも色の編成だ。

スーパーやくも色の「やくも」5号
右の出雲市方の先頭車両が「パノラマグリーン車」。

 岡山駅でひととおり写真を撮ったら,「やくも」5号のパノラマグリーン車に乗車。私の席は最前列の1号車1番 C 席である。国鉄形電車といえども,車内は2007年からの"ゆったりやくも"化改造によりリニューアルを受けているため,内装や座席に古さはさほど感じない。また「やくも」のグリーン車は1-2列席なのも好ましい*2。  

(左)パノラマグリーン車最前列 / (右)1号車1番C席からの風景

 1号車1番 C 席に着席すると,なるほどパノラマ車両というだけあって眼の前広がるのは運転席ごしの前面展望の眺望である。最前列のため側窓の眺望はあまりよくないが,前面だけでも十分すぎる眺望があるので問題ないだろう。ただ経年劣化なのかフロントガラスの曲面部分が白っぽくなっていて,やけに視界に入るのが気になる。

 ちなみに,最前列でも1号車1番A席とB席は運転士の後ろにあたるため,やや前面展望の景色は見づらい。1号車1番C席がパノラマグリーン車の中で唯一の当たり席となる。

 岡山を発車後,山陽本線を走ったあと倉敷から伯備線へ。伯備線中国山地を横断する路線で,一部が単線区間となるなど曲線の多い線形だ。そんな路線を,「やくも」は100km~110kmほどで快走する。

目の前の景色にすべて奪われる

 以前,普通車に乗ったときに気になった振り子式車両特有の揺れの大きさは思ったほど感じない。前を見ていて線形がわかっているので,自分がクルマを運転していると G の変化を感じにくいのと同じように,体が身構えるので揺れを感じにくいのかもしれない。また,パノラマグリーン車はモータがついていないため,走行音は大きくない。そんなこともあって,他のディーゼル特急などと比較すると,振り子車両が爆走することによる速度感は小さいように感じた

 伯備線に沿って高梁川の流れが見えたり,伯備線電車や特急「やくも」がすれ違たっりするなど,前面展望の景色は激しく変わり,忙しなさすらある。だがそれがいい。せっかくのグリーン車なのに,シートのリクライニングも倒さず,私の視線はうつろいゆく前面展望に釘付けになる。

 そんな前面展望の楽しみは,新見あたりから乗ってきた添乗の係員2名によって半減された。仕方のないことではあるが,なにもパノラマ車両で2名も添乗しなくても……と思わないことはない。

2人も添乗していたらあまり前が見えない

 「やくも」5号は県境の谷田たんだたわをトンネルで抜けて鳥取県へ。ぐずついた天気の中,米子に向けて駆けていく。伯耆大山山陰本線と合流し,米子着。後半は添乗であまり前が見えないというトラブル(?)もあったものの,楽しいパノラマ列車旅となった。

つづく

ashizin.hatenablog.com


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*1:パノラマグリーン車の設定は無し

*2:新型車両の273系もグリーン車は1-2列席となる予定