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モヤ700系に乗る!相鉄モヤ700系乗車体験会レポート

 2月11日(土)に相鉄にて「【出発進行!幸せの黄色い電車に潜入】モヤ700系乗車体験会」が開催された。相鉄線JR東海とのコラボレーション企画で,JR東海ツアーズの旅行商品として発売された。

 相鉄モヤ700系は,相鉄線での架線の測定をしたり,機関車の代わりになったりする特殊な電車である。その役割から,モヤ700系は一般利用者を乗せることを想定していない事業用車両となっている。私は相鉄線ユーザであり,モヤ700系も過去に撮り鉄したことがあるが,モヤ700は運行日を調べて狙って見に行かないと本線上での走行はなかなかお目にかかれない車両だ。そんな車両が土曜日に走るだけでなく,乗車することができるという特別なイベントである。そんなイベントは今後あるかどうかわからない。旅行商品の発売開始と同時にツアーを申し込んだ。

モヤ700系乗車体験会

 私が参加するのは午前・午後それぞれある回のうちの午後の部である。14時にかしわ台駅にある「かしわ台車両センター」に集合。受付を済ませると,指定席券代わりの「モヤ700系乗車記念証」をいただいた。D型硬券で,日付や駅名がハンコで捺されている。ハンコはかしわ台駅で実際に使われているものだろうか? 

モヤ700系乗車記念証

 なおモヤ700系のイベントは午前・午後ともにかしわ台駅発着のためこのような「補充式」の硬券にする必要はない。車両の特性からしかしわ台車両センター以外からの乗降は難しいので,記念要素として(よりマニアックにするために?)あえて「補充式」にしたのだろう。ハンコがすこし傾いているあたりも,硬券1枚1枚にハンコを捺していただいた相鉄の担当者の苦労がうかがえる。

かしわ台車両センターの立入禁止エリアへ。相鉄の車両たちが並ぶ。

 相鉄の係員に引率され,立入禁止エリアに入ってモヤ700がいる車庫へ向かう。道すがらには,車庫で留置中の相鉄12000系など,相鉄線で活躍する車両たちが並ぶ。鉄道関係者でなければこの視線で車両を見る機会は少ないので,この時点でテンションが上がってくる。

モヤ700系に乗車

モヤ700系に乗車

 そしてモヤ700系と対面し,ハシゴを使って乗車。相鉄の係員の方からはかなり寛大な対応をいただき,車内外の写真撮影を許可いただけた*1。ツアーの案内には「車内の探索はできません」とあったにもかかわらずである。私の指定はモヤ701~704の4両編成のうち,モヤ702の車両であった。モヤ702からモヤ703・モヤ704へは貫通路が無いので移動することができないが,モヤ701・モヤ702車内は比較的自由に見学することができた。以下に車内の様子を撮影した写真を掲載する。一部はかしわ台駅厚木駅で撮影したものも含む。

モヤ701の運転台

モヤ701の検測機器

検測機器の裏側

種車7000系から残るだろうプレート

相鉄特有の「鏡」はモヤ700車内にも残る。架線検測機器のスイッチと並ぶ。

モヤ702の車内。つり革が撤去されて車内は広々。
7000系時代の座席のほか,先代のモニ2000の座席も移植されているらしい。

 モヤ701は検測機器が搭載されているとりわけ特殊な車両だ。たとえばJR東海の新幹線検測車923形(ドクターイエロー)の内部がテレビで公開されても,検測機器は基本的に撮影 NG だ。鉄道事業者やメーカの企業秘密の塊だからである。しかし相鉄モヤ700系体験では自由に撮影 OK とのことで,あまりに太っ腹な対応に驚いて,本当に写真を撮っていいのかとおそるおそるシャッターを切った。

厚木線乗車体験と撮影会

 いよいよ乗車体験だ。私たちを乗せたモヤ700系は,独特なエアー音を奏でて,静かに動き出す。かしわ台車両センターから入換でかしわ台駅ホームへ据え付けられたあと,かしわ台駅から海老名方面へ。かしわ台駅からすぐの相模国分信号所ですぐに相鉄本線から離れて相鉄厚木線に入る。

相鉄厚木線と他線の位置関係。地理院地図に筆者書き込み。

 相鉄厚木線は相模国分信号所~厚木操車所をむすぶ路線だ。一般の営業列車は走っておらず,車庫代わりとなっている厚木操車所への回送列車や,車両メーカから発送された相鉄の車両が厚木駅で JR から引き渡されて厚木線を経由してかしわ台へ輸送される程度である。事業用車両であるモヤ700に乗りながら,非営業路線の相鉄厚木線を走るという特別感は,これにまさるものはない。

相鉄厚木線から見る小田急海老名検車区

 相鉄厚木線は相模国分を通過すると,すぐに小田急線をまたぎ,小田急海老名検車区の西側を走る。やがて JR 相模線の海老名駅のあたりから JR 相模線と並行しそのまま厚木操車所までぴったり寄り添うような線形で厚木操車所まで向かう。JR 海老名駅付近では相鉄厚木線を海老名駅ペデストリアンデッキが跨いでいるが,ここは大量の撮り鉄であふれていた。外観は通常の検測時とほぼ同じモヤ700系であるが,土曜日のモヤ700運行は珍しいため,かなりの人出となったようだ。

モヤ700車内から,モヤ目当ての撮り鉄を眺める

 厚木操車所へ到着すると体験会参加者向けの撮影タイムだ。モヤは写真が撮りやすい位置へ,所定停止位置からすこし移動。所定停止位置だとどのような点がまずいのかはわからないが,相鉄の担当者の方の心配りがうれしい。

モヤ700系@厚木操車所

青空に黄色い車体のコントラストが映える@厚木操車所

 すでに撮り鉄は引退済みだが,モヤ700系を,ましてや操車所の中で撮影できる機会はなかなかない。思う存分に写真を撮らせていただいた。モヤに装備されている方向幕を「貸切」「検測」などに変えたり,ワイパーや前照灯の状態をアレンジしたりなど,相鉄の担当者の方は撮り鉄のオーダにもできる限り応えていて,非常にマニアックな撮影会だった。

モヤ700系の「方向幕」。幕はロール状ではなく,1枚1枚差し替えて掲出する。

モヤ700系乗車 厚木→羽沢横浜国大→かしわ台

 撮影会終了後は厚木操車所→羽沢横浜国大→かしわ台の行路で相鉄本線を走行する。厚木から羽沢横浜国大へは途中駅ノンストップで走行。瀬谷駅までは特急列車の後を走っていて,モータを唸らせながらトップスピードで走行する場面もあった。瀬谷駅から先は1分遅れの JR 直通各停の後を走るため,羽沢横浜国大駅までノロノロ運転。とはいえ特急停車駅である大和も,二俣川も,西谷もすべて通過してしまうシーンを車内から眺められた。

 羽沢横浜国大駅で折り返し,かしわ台駅へは瀬谷駅で3分停車する以外はこちらもノンストップ。やはり先行列車に追いついてしまいノロノロ運転ではあったものの,特急停車駅を通過する爽快感を復路も味わうことができた。

旅行後記

 モヤ700系は事業用車両であり,ツアーの案内にも「車内の探索はできない」と記載されていたので,正直言ってモヤ車内に入って着席したら基本的には身動きがとれないものかと思っていた。それでもモヤ700に乗って本線を乗車できるだけで十分楽しみな内容だった。ところが実際には停車中であれば同一編成内であれば見学も写真撮影も OK で,事業用車両なのにこんなに太っ腹な内容で良いのかと,参加した私のほうが恐縮するほど,非常に濃厚でマニアックな体験だった。今回のツアー代金は1人20,000円とやや値が張ったものの,その価格を上回る価値を得られて非常に満足なツアーだった。

 ツアー終了後のJR東海ツアーズのアンケートには,「今後,鉄道会社とのコラボレーション企画をするならどのような内容がよいか」(大意)という質問もあった。今後も,相鉄モヤ700系乗車体験のような,マニアックな体験ツアーがJR東海ツアーズから発売されることを期待したい。


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*1:車内撮影や見学は駅や車両センタ内の停車中のみ