きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

多彩な姿を見せる福井の鉄道(1) ――福井鉄道

訪問日:2016.5.28

 前のページで福井行きのバスに乗ったのは,福井市を中心に運行される鉄道の訪問にありました。率直に申し上げて福井の鉄道はいま面白いことになっています。福井県や市では自動車に過度に依存しない持続可能なまちの実現を目指し*1,公共交通網の見直しと様々な施策を実施していて,中でも福井鉄道えちぜん鉄道の直通運転が実施されたことは特筆すべきところです。もともと福井鉄道はインターアーバンの代表格的な運行スタイルを持っていて,福井市中心部では併用軌道を,郊外では鉄道線でもって高頻度運転を行っていました。直通運転によってえちぜん鉄道もその運行スタイルを持ち合わすことになり,福井市では多彩な姿を見せる福井の鉄道を見ることが出来ます。

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  巨大な恐竜のオブジェクトが圧巻な福井駅西口。北陸新幹線福井延伸を見据えて駅前再開発が進んでいて,2016年3月27日には福井鉄道支線(通称ヒゲ線)が西口広場に乗り入れました。

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 JR福井駅をバックに”福井駅”駅を出発する福鉄電車。この乗り入れにより雨に濡れること無くJRとの乗り換えができ,利便性が向上していると思われます。

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 まだ朝早くなので市役所前駅付近で撮り鉄を続けてみます。福井鉄道は地方私鉄ながら急行運転も行っています。足羽川に架かる幸橋を渡り市役所前駅へ向かう元名鉄岐阜市内線の880形。

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 急行のほかにも区間急行も。併用軌道をもつ事業者で複数の列車種別を持っているところってかなり珍しい部類かと思います。急行・区間急行ともに併用軌道内での急行運転は行いませんが。

 福井駅への支線は市役所前駅の田原町方からしか入ることができず,写真の区間急行越前武生行きのような福井駅→武生方面の列車は福井駅を発車して市役所前の田原町方面のホームに入ってエンド交換をしてから越前武生方面のホームに入ってきます。武生方面→福井駅の列車も逆のことをします。

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  2013年に鳴り物入りで新造されたF1000形"FUKURAM"。福井の公共交通利用促進に一役買うと期待されているLRVで,乗降時のステップを失くしたバリアフリー仕様かつえちぜん鉄道への直通もできる優れものです。この列車も田原町からえちぜん鉄道に乗り入れて福大前西福井までの運行。

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 別のタイミングで撮影したF1000形"FUKURAM"の車内。座席配置は海外に多い”非”字に近く,着席定員を増やしています。

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 FUKURAMUのような現代的な新造車もある一方で,こんな車両も併用軌道上を走っているのが福鉄の面白いところ。元名古屋市交の610形。若干くたびれた車体に一昔前のタッチでお花とか描かれているので尚更ギャップを感じます。

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 ドア位置が高床ホームの大型車両が併用軌道内で客扱いをするのも福井鉄道特有の光景ですね。

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 単行運転でやってきたのは元名古屋市交の600形。福井鉄道ではかつてこのような大型車のみで運転されていましたが,2006年のLRT化による元名鉄車の導入で大型車の運転はラッシュ時のみとなりました。しかしこのような経緯から多様な車両が併用軌道を見れるという点で趣味的にかなり面白い鉄道であると思います。

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 バリアフリー?なにそれおいしいの?と言わんばかりの怒濤の3段ステップ。開扉と同時に展開されるこのステップも福鉄特有の光景ですが,F1000形の導入とともに大型車両は淘汰されていくようです。

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 この600形電車に乗車。田原町に向かいえちぜん鉄道も見に行きました。

(つづく)

京福/福鉄バス ドリーム福井1号(2号車) 東京駅八重洲口→福井駅前

乗車日:2016.5.27

 5月下旬,福井の鉄道を探訪。その際,福井到着後朝早くから行動したかったため夜行高速バスを利用することにしました。乗車したのは東京~福井間唯一の夜行バスであるドリーム福井号です。このドリーム福井号,東京=福井間という旅客移動量の小さい都市間ながら,新幹線駅や航路がなく,時間がかかっても直通で利用したいという需要があるようで昼行1往復・夜行2往復と比較的本数が多くなっています。

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 さてこの日は金曜日。東京駅八重洲口高速バス乗り場は賑やか。夜行列車が減少している一方で夜行高速バスは拡大の一途であり,この東京駅八重洲口高速バス乗り場からはピーク時5分~10分間隔で空港や関東郊外への近距離路線のほか全国各地へ向かう夜行バスが発着しています。

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 この日乗車するのは22:10発,福井行きの「ドリーム福井1号」。京福バス(黄色)と福鉄バス(青色)の2台体制での運転。

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 バスターミナルの隣り合うようにして乗降を扱うドリーム福井号。

 今回は福鉄運行の2号車に乗車しました。……というか,予約したのが前日夜だったので空席が2号車にしかありませんでした。

 車内はフルリクライニングの3列シートで一般的な高速バスの環境。とはいえコンセントなUSBポート等の備えはなく,携帯電話利用の場合はモバイルバッテリー等が必要です。

 このドリーム福井号,夜行バスに乗り慣れた私でも「あれ?」と思うところが2点ありました。まず乗車した2号車がバスタ新宿での乗車扱いをせず通過した点。これはおそらくバスタ新宿のキャパシティの問題なんだろうと思います。

 そして開放休憩となる足柄SAでは案内やドアの開扉がなく,旅客の申し出でようやく外に出られましたが,最低限のトイレ休憩と飲み物の確保のみの時間しか与えられず5分間ほどの停車に留まったこと。2人運行なので乗務員交代と車両点検ができればよいという判断なのかもしれませんが,体をほぐすためにも10分~15分ほどの休憩は欲しいところです。

 バスタ新宿の通過と足柄SAの短時間休憩のおかげで定刻より30分以上早く発車したバスでしたが,福井には定刻通り到着。どこかしらで長時間停車があったはずですが,足柄発車後から福井まで寝てたので真相は闇の中です。

関東バス 湾01系統急行 吉祥寺~お台場直行バス に乗ってみた

乗車日:2016/04/24

 都内城西地区に運行エリアを持つ関東バスでは,「吉祥寺~お台場直行バス」という急行バスが運行されています*1。土日のみ運転ですが,吉祥寺および高井戸から首都高速を経由して台場へ乗換なしでアクセスできるという触れ込みです。

 お台場へ所用があったため,この急行バスに乗車してみました。

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 「吉祥寺~お台場直行バス」は吉祥寺駅北口のバス乗り場に出たすぐのところにある3番のりばからの発車です。上石神井方面などのバスが絶えず発車していくバス乗り場にその合間をぬって入ってきます。

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 「吉祥寺~お台場直行バス」こと湾01系統がやってきました(写真右)。通常の路線バス車両を使用しているように見えますが,車内は高速道路走行に対応したシートベルト付きの座席が配されています。乗車時に降車バス停を申告して運賃を支払いますが,降りるバス停は台場駅付近の「ホテルグランパシフィック・ル・ダイバ」か「大江戸温泉物語」の2択で,どちらも同じ運賃です。

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 バスは吉祥寺駅から高井戸駅を経由して永福から首都高速へ。制限速度遵守の60kmでのんびり走行。レインボーブリッジをわたってフ○テレビがみえきたらまもなく台場。

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 終点の大江戸温泉物語で下車。下車時に運転手より大江戸温泉物語の割引券を頂きましたが,今回は温泉利用ではなかったので使いませんでした…。

 バスは午前午後それぞれ1往復の合計2往復運転。午後の台場行きということで,この日は吉祥寺から乗った2人が大江戸温泉物語まで乗り通しただけでした。

 

 珍しい首都高速経由の路線バスですが,なぜこのような路線があるのか。吉祥寺~お台場直行バスと吉祥寺~台場間のJR+ゆりかもめ利用の場合の比較をしてみます。

  JR+ゆりかもめ:運賃 710円 約1時間(乗換時間含む) 乗換2回

  吉祥寺~お台場直行バス:運賃860円 約1時間10分 乗換なし

 このように,東京城西地区と臨海エリアの鉄道アクセスは良くありません。そこで乗り換え無しで台場に行きたいといった潜在的需要に応えた路線になっているようで,数回の乗換の煩わしさと快適性を考えればこの路線バスはかなり便利なものになっています。ただ,吉祥寺~お台場直行バスは台場側の停留所が2箇所しかなく,台場に着いてからのアクセスがあまり良いとは言えなさそうな感じもします。

台湾鉄道一周ひとり旅(6) 高雄捷運環狀輕軌(高雄ライトレール)に試乗する

訪問日 2015.11.17

前回の記事の続き

次の目的地は台湾初の路面電車でかつ開業前の試乗運行が行われている高雄ライトレールの乗車。運行区間は高雄市南部の一部区間で,試乗運行区間へのアクセスは高雄捷運紅線の凱旋(Kaixuan)駅で乗換え。高鐵を降りて左営から紅線に乗車しまずは凱旋駅を目指します。

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 高雄捷運紅線は2008年に開通したばかりの比較的新しい鉄道。構内は密閉型のホームドアが設置され,バリアフリーも充実していてかなり現代的な設備になっています。

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 そんな高雄捷運ですが高捷少女という萌えキャラを公式に持っていて*1車内や駅構内の啓発ポスターに積極的に萌えキャラが使われています。高雄捷運は「萌えにも寛容そうな台湾」という自分の勝手なイメージにピッタリw

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 駅構内飲食禁止のポスター。同内容のポスターですが左右で全くイメージが違います。

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 凱旋駅の構内にも等身大の二次元お姉さんによる案内が。

 凱旋駅では交通系ICカードである一卡通(イーカートン)を購入。同様のICカードである悠遊卡を既に持っていましたが,日本のSuicaが東日本中心でICOCAが西日本中心のように,台湾でも交通系カードの利用可能エリアがあり,一卡通は台湾南部を中心に通用しています。そして今回の高雄ライトレールの試乗ではこの一卡通の使用が必須でした。

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 凱旋駅を出てすぐのところにライトレール乗車駅までの送迎バス乗り場のテントが出ていました。今回の旅行で初めての大都市訪問となりましたが,やはりバイクの多さに圧倒されます。

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 帰りに撮った写真ですが,前面表示に「輕軌 試営運」(ライトレール試験運行),「免費接駁車」(無料送迎バス)とあるようにライトレールの駅まで無料で乗車できます。高雄市バスの運行会社のひとつ,漢程客運による運行。

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 高雄ライトレールの起点,籬仔内(Lizinei)駅に到着。ここからライトレールに乗車します。試験運行では基本的に乗車の予約をした人のみが乗車できますが,席が空いていれば予約なしでも乗車できます。平日午後で空いていたせいか,係員に特に声をかけられることなく乗車できました。

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 高雄ライトレールは高雄臨港線の転用であることから専用軌道を有していて,軌道は緑化され街路樹の立ち並ぶ沿線に調和しているように見えます。またなんといってもこの架線の無いすっきりとした景観。停車中に駅構内にあるわずかな架線から集電し,走行中は蓄電池を利用する方式になっています。架線レスの路面電車は世界初なんだとか*2

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 発車まで時間が有ったので車両回りを適当に撮影。車両はCAF製。といってもまったく存じないメーカーですが欧米向けの鉄道車両を製造しているスペインのメーカーのようです。

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 ちなみに試乗運行に使用される車両は2編成あるようで,片方は魔法少女iPass*3の小帕ちゃんやデフォルメされた高雄市長のラッピングがされていて,「車内かホームでICカードをタッチしてね!」とか「乗車する時はボタンを押してください!」なんて書かれています。路面電車の無かった台湾ではICカード簡易改札も半自動ドアも無かったんじゃないでしょうか。私も乗り込む時にドアが閉まっていて固まっていたら係員に「ボタンを押して開けてください」と案内され乗り込むことができました。なお今回はラッピングされていないほうの車両が試験乗車用となっていました。

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 車内はこんな感じ。車両は5連接で1編成の車体長は34.6mとなっていて、かなりの輸送力があります。広島電鉄グリーンムーバーなどは同じ5連接でも30m程度の車体長なのでそれより長いことになります。座席配置は”非”字とロングシートのみのミックス。列車は動き出すとかなりの加速度でぐんぐん速度を上げてあっという間に最高速度の50kmで走行。揺れもすくなく快適でした。ただ,道路との交差部分に警報機はあっても遮断機はなく係員が交通整理をしている状況で,バイクや自動車の直前横断も頻発。道路を横断する際はかなり徐行していました。

 籬仔内から4駅先の凱旋中華まで行ったところで折返し。体験乗車なので折返し地点での下車は不可でした。ここで乗降できれば紅線の凱旋駅にかなり近くて便利なのですが(苦笑)。

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 高雄ライトレールは現在も本格的な運行に至っていませんが,2016年中にはさらに試験運行区間が拡がるようで今後の動きに期待したいところ。ただ,先述したように台湾で初めてとなる路面電車なので,バイクが非常に多い高雄の交通事情を加味したうえで慎重な安全対策も必要かなと感じられます。 

 このあとは瑞豊夜市などを散策して市内のドミトリー泊。

(諸事情により台湾編はこの記事を以って更新終了とします)

 

台湾鉄道一周ひとり旅(5) 台湾高鐵203次 台中→左營

訪問日 2015.11.17

前回の記事の続き

 新烏日と同一地点にある高鐵台中(Taizhong)駅から台湾高鐵に乗り高雄郊外の左營(Zuoying)を目指します。新烏日は台湾高鐵(台湾新幹線)の台中駅の設置と同時に整備された駅で,一体化した駅舎を持ちながら別々の駅名となっています。

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 日本の新幹線は国策として整備・建設され,国鉄やJRによってそのまま運営されていますが,台湾高鐵は国策として浮上したものの民間による建設・運営となっています。公営の台鐵とは異なる組織であるため,このように同一地点でも駅名が異なり,台鐵でも高鐵と並行する区間で特急にあたる自強號を多く走らせています。

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 台鐵新烏日-高鐵台中駅間の連絡通路(?)はかなり広々としていて,遊覧鉄道や鉄道ショップなど鉄道にまつわるものが多くあります。

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 乗り継ぎに時間があったので,確か暇つぶしにこの台湾鐵道故事館に入り,鉄道グッズを漁っていたところ,「臺灣鐵路列車時刻表」と書かれた本が目に入りました。

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 台鐵は時刻表を無料配布していますが,對號列車(莒光號などの指定席列車)と非對號列車(區間車など)の時刻表が別個になっていて,しかも對號はタテ列,非對號はヨコ列の時刻表になっているなどわかりづらいものでした。この臺灣鐵路時刻表は無料配布ではなく市販されているものですが,日本の時刻表と同様に全ての列車が発車する順番に掲載されています。定価は69元なのですが,お試し価格で50元に値引きされていました。時刻表に加えてスタンプページなどの付録がついて200頁ほどありかなりのボリュームです。

 日本のJR時刻表などの体裁の時刻表として,2012年から日本の同人サークル日本鉄道研究団体連合会が同人出版している「日式台湾時刻表」があり,「臺灣鐵路列車時刻表」はこの「日式台湾時刻表」に大きく影響されたと思われます。

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 閑話休題。高鐵のりばへ向かいきっぷを購入します。

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 近くには柱を囲むように券売機が設置されていましたが,きっぷを買おうとすると現金は使えずクレジットカード決済のみの券売機でした。現金投入口のある筐体なのに。現金利用のできる券売機がほかにあったのかもしれませんが,探すのが面倒だったのでここでクレジットカード決済できっぷを購入。

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(スキャンの関係で四隅が四角くなっていますが丸みを帯びた角をもつ券です)

 運賃表記(NT$860)の隣に書いてある「信用卡」の表記からクレジットカードカード決済であることがわかります。いくら交通費の安い台湾とはいえ,新幹線はいいお値段になりますね……。台中~左營は180kmくらいあるので日本の新幹線よりは全然安いほうですが。

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 構内の一角に目をやると大戸屋ヤマザキパンショップ的な何か,それに寿司屋。ここは日本だったのか…?

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ホームに上がって203次に乗車します。700系新幹線をベースにした700T型電車。

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 車内も東海道新幹線に乗っているのと大差ない感じ。速達型の203次は台中から左営まで無停車。あっという間に台湾南部の左営に到着。途中から寝ていて、左營では寝起きで動いていたので写真はありません汗

(つづく)

 

台湾鉄道一周ひとり旅(4) 海線追分駅の硬券,追分駅から新烏日へ

訪問日 2015.11.17

前回の記事の続き

 沙鹿(Shalu)車站から區間車(各駅停車のローカル列車)に乗車し南下,追分(Zhuifen)車站を目指します。

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 券面の沙鹿の上にある「復興」は運賃種別。日本の鉄道と異なり,台鐵の運賃は列車種別ごとに運賃が設定され,乗車する種別ごとの切符が必要になります*1。対キロあたりの運賃が安い順に「普快」<「復興」「區間」<「莒光」<「自強」となっています*2。このきっぷを買った沙鹿は復興號の停車はありませんが,券売機の設定として残されていました。區間車の運賃と同じなので復興號のきっぷでも代用可能です。

 沙鹿から10数分で追分に到着。沙鹿での事件もあり落ち込んでいたので写真少なめです。

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 追分車站は日本統治時代の1922年に開業。その当時からの瓦屋根の木造駅舎が残されています。

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 追分車站は線形の悪い旧山線の輸送改善を図るために海線が建設,海線から離れている台中などの都市への便宜を図るものとして現在の成追線が建設,その分岐点(追分=おいわけ)の駅として開業された経緯があります。追分という日本語由来の駅名ですが,そのまま残され中国語では「ツィフェン」と読まれています。

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 駅舎内も落ち着いた良い雰囲気が醸しだされています。このような駅舎は台鐵でも少なく,観光地化されているようです。写真右側にある出札窓口でこの日お目当てにしていた硬券を購入します。

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 それがこの硬券。追分から成功までの單程票(片道券)と去回票(往復券)。成功は成追線経由で隣駅にあたる駅ですが,この2種類のきっぷが分かれ道から成功に至る縁起物切符として売りだされています。台鐵は日本統治時代を終えたあとも日本の鉄道のように活版印刷による硬券を使用していた経緯があり,そのサイズや券面表記から日本の硬券の趣が残っています。

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 そんな追分駅ですが,現代化もかなり進められているようで,この日はモニター式の発車票の設置工事が行われていました。反対側には路線バスの発車案内と接近情報モニターも。30分ほど滞在して駅を利用した旅客は数人,発着する列車の本数も1時間に1本~2本程度の駅なのですが……。

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 当初は上記の硬券を使い成追線経由の列車に乗車して成功駅を訪問し,新烏日に抜ける予定でしたが,沙鹿の事件のせいで1時間ほど行程が遅れていて,成追線の列車もなく今後の予定に響くことから,成功駅の訪問はパスして路線バスを利用して新烏日を目指します。駅にあるモニターで新烏日行きの路線バスの接近を確認して近くの省道1號*3上にある追分バス停へ。ほどなくしてバスがやってきました。

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  この日乗った台中市公車(台中市バス)617路は台中市BRTの廃止で利用されなくなった連節車を活用して2015年10月に開通したばかりの新規路線でした。沙鹿に近い台中市梧棲区農会~台鐵新烏日駅間を結んでいます。乗車するとICカードリーダーや運賃箱が無いので運転手に尋ねると運賃は無料とのこと*4。台湾の公共交通機関は新規開通直後に無料で乗車できることが多いです。

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 連節車を利用した豪勢な路線バスでしたが,この日の利用客は2人。こんなので路線バス経営が成り立っているのでしょうか……。成功車站を横目に見ながら15分程度で新烏日(Xinwuri)に到着。

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(つづく)

 

*1:悠遊カードなどのICカードを利用する場合などに例外あり。

*2:最安の普快車は1kmあたり1.06元,最高の自強は1kmあたり2.27元。参考=台鐵HP2016/01/24閲覧。

*3:日本でいう国道1号

*4:617路の免費(運賃免除)は開通2箇月後までで,現在は乗車距離に対して運賃が必要。

台湾鉄道一周ひとり旅(3) 561次莒光號 桃園→沙鹿

訪問日 2015.11.17

 前回からの続き。

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 この日最初の目的地は日本統治時代からの駅舎が残り,硬券での乗車券の発売を行っている追分(Zhuifen)車站。桃園からは561次莒光號に乗車し南下します。莒光號はJRでいう急行列車に近く,客車列車の編成でのんびりと走っています。

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 561次莒光號は台湾北東部の花蓮(Hualian)を6:07に西部幹線まわりで50の駅に停車し台湾南部の潮洲(Zhuzhou)に16:53に着くというロングラン列車。台湾鉄路では数分程度の遅れは日常茶飯事ですが,このときは大した遅れもなくやってきました。

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 車内に乗り込み指定された座席に座ると客車特有の発車時のショックと滑り出しを感じられて初っ端から旅情を掻き立ててくれます。とりあえず昼ごはんに桃園車站のセブンイレブンで購入した新國民便當をいただく。八角風味の排骨(骨付き肉)を台湾版ルートビアである黑松沙士で流し込み胃腸まで完全に台湾仕様になりました(苦笑) ちなみに台湾のコンビニではレジ袋が有料なので,日本から持ってきたエコバッグが今回の旅行ではかなり役に立ちました。

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 比較的良い時間帯を走る列車であるためか,桃園を出た直後はほぼ満席だった列車も南下するにつれて空席が目立つようにました。列車は途中の竹南(Zhunan)から海岸線に入り,列車の速度も車窓の景色ものんびり。海岸線はその名の通り海岸沿いを走り,複線と単線入り混じる線形から日本でいう羽越線のような感じでしょうか?

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 客車は冷房に自動放送も完備ですが旧型の車両だったため乗降扉は手動で,走行中でも開閉することができます*1。この日は乗客のひとりがドア全開で外の景色をずっと眺めていました。

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 目的地の追分は莒光號は停まらないので手前の沙鹿(Shalu)で下車。ここでようやく先頭機関車の写真が撮れました。この日はE208+1000型等莒光號客車の編成。

 沙鹿は2面4線の駅なのですが,前後が単線のためか北上・南下のどちらの列車も同じホーム・同じ線に入ってくる。鉄オタ特有の先入観のせいかなんとなくわかりにくい。

 そして続行の區間車,ローカル輸送の各駅停車列車に乗って追分に向かうわけですが,ここで問題が。沙鹿で列車待ちのため座っていたベンチの下に携帯を落としてしまったのです。台湾移動中に仕入れる情報の8割を携帯に頼っていたので,まさに大ピンチでした。列車が沙鹿を発車したあとに気付いたのでとりあえず隣の駅で引き返すことにしました。

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  沙鹿の隣の龍井(Longjing)という駅は台中郊外の田舎にあって駅員が居るのか不安でしたが,ちゃんと駅員が列車監視をしていました。とりあえず改札に向かうわけですが,きっぷも携帯の定期入れに入れていたので当然無札状態。駅員に何か言われる前にこちらから拙い中国語で事情を説明しました。するとなんとかこちらの意思を汲みとってくださり,駅長室に招かれ沙鹿に連絡を取り次いでくれました。ローカル線なので沙鹿に戻る列車は30分ほど後だったのですが,「日本のどこから来たの?本州?」「なんで中国語が喋れるの?」などと話しかけてくださり,不安だった気持ちが少し和らぎました。台鐵の駅員さんの優しさに感動した一幕でした。

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 そして北上列車に乗って沙鹿に戻り,なくしていた携帯を無事受け取りました。再び南下列車に乗車して追分駅を目指します。

 

(つづく)

*1:ドア近くに「走行中はドアを開けるな」という旨の注意書きがある。