先日,久しぶりに渡道して,最北の鉄路宗谷本線(旭川~稚内)を走破する観光列車急行「花たび そうや」号に乗車してきた。
「花たび そうや」は5月から6月にかけての週末に運転。土曜日に旭川から稚内へ,日曜日に稚内から旭川へと週末2日間かけて往復する運行形態になっている。
列車は旭川~稚内間の約260kmを約7時間かけて走破する。途中の駅では30分ほどの停車時間を設けられていて,一つの列車に乗りながら沿線地域のグルメやお土産を楽しめたり,ゆるキャラと触れ合えたりできるのが最大の魅力だ。
上り列車と下り列車で停車駅が異なり,起終点を除いて同じ駅では客扱いしないので,往復乗車するのが前提かもしれない。
キハ40系とキハ54系で運行
「花たび そうや」号はJR北海道でも数を減らしているキハ40系+キハ54系の4両編成で運行。しかもキハ54系を挟む形でキハ40系が先頭につくという珍しい組成だ。
車内も車両によってボックス席だったりクロスシートだったりする。今回私が利用した席はキハ54のクロスシート。やや狭いが,今回は嫁との2人旅行のため,他人を気にしなくてよくて良かった。
なお,キハ54系の座席は窓と座席の配置が合っておらず,「ほぼ全てハズレ」の様相なのだが,5番席だけは窓と席がぴったり合っている「アタリ」席である。
全車両に存在するロングシートや,キハ40系の2人がけ席は,指定席の割り当てがなくフリースペースとして開放される。乗客は思い思いにフリースペース等でもくつろいでいるので,思ったほどの窮屈さは無い。
花たび そうや号はきっぷも珍しい
「花たび そうや」号は現在日本で定期運行がない急行列車。比較的珍しい「急行券」であることや,発着時刻からわかる乗車時間の長さ,運賃の高さからわかる乗車距離の長さなど,この列車の特徴が券面に多く現れている。
「花たび そうや」号で飲み食い旅
今回私が乗車したのは稚内発旭川行きの上り列車である。まだ風がつめたい日本最北端の駅を発車して,列車は南へ進む。
稚内から音威子府あたりまでは,人口がかなり少ないエリアだ。沿線は牧場や原野ばかりという宗谷本線ならではの車窓を楽しむ。
列車はフォトスポット等の徐行区間を除いて時速80km~90kmほどで走行。走っているときは意外と早く,いかにも急行列車らしい雰囲気があって,それもまたマニア心がくすぐられる。
途中で停車する駅では地元の方からの大歓迎を受ける。酪農が盛んな豊富では飲むヨーグルトの無料配布,絵本の里剣淵では無料紙芝居の読み聞かせなどのおもてなしがあった。地域独自の名産品や名物を駅の中で堪能できるというのは,特に宗谷本線のような列車の本数が少ない路線ではなかなかできず,とてもありがたい。
缶ビールと合わせて贅沢なレッドアイに。
最後の途中停車駅である塩狩駅では,やや長めに停車。駅に隣接する「塩狩峠記念館(三浦綾子旧宅)」の見学をすることもできた。嫁は三浦綾子の『塩狩峠』を読了していたので,実際に塩狩駅に降り立ったり記念館を訪問したりして感慨深いようだった。
乗車後記
北海道の広い大地を眺めながら,沿線からのおもてなしを受けたりグルメを味わったり。通常の列車やドライブでは味わえない唯一無二の体験ができる「花たび そうや」号。公式サイトなどを見てかなり期待度は高かったが,実際に「花たび そうや」号に乗ってみて,期待以上にとても楽しい一日を過ごすことができた。
惜しい点があるとすれば「花たび そうや」号は5月~6月初旬の週末のみ運転で運転回数がとても少なく,さらに人気の列車なうえに旅行会社の団体ツアーで最初から席が抜かれているなど,予約難易度が高いことだ。リソースがあるかぎりは春のみの運転とせず,冬季以外は通年で運行してほしい。沿線自治体にとってもそのほうが嬉しいだろう。
「花たび そうや」号は2019年に運行された「風っこ そうや」号を発展させた列車で,コロナ禍に巻き込まれながらも2022年から車両などアレンジしつつ毎年春に運行されている。今年の「花たび そうや」号車内でも JR がアンケートを行っており,まだできることを模索しているといった感じだった。来年度以降はまた違う仕掛けがあるかもしれない。引き続き,今後の運行に注目したい列車だ。
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