福井県西部の若狭湾に面したあたりを,かつて若狭国といった。古代には「御食国(みけつくに)」と言われるほどサバをはじめとした海産物が豊富にとれ,それらは若狭街道を通じて小浜から京都に運ばれた。若狭街道のルートはいくつかあるが,小浜から朽木に抜け,花折断層のリニアメントに沿って大原・京都へ出るルート*1が有名だ。 翻って現在の鉄道網を見ると,小浜から鉄道で京都に行こうとすると,小浜線で敦賀に出てから北陸本線・湖西線に乗り継ぐことになり,約3時間かかる。そこで小浜から湖西線の近江今津まで西日本JRバス若江線を利用すると1時間40分で済む。
この若江線だが若狭街道にそって鉄道敷設の計画が20世紀初頭からあったらしく,鉄道線の先行の役割を担って国鉄バスとして開設された経緯がある。その後若狭街道に沿った鉄道路線は実現していないが,現代では湖西線の建設により鉄道線の短絡という役割も持っている。
この日私は「一宮めぐり」と若狭湾のグルメを味わうため,小浜に来ていた。もちろんこの若江線に乗車することも目的のひとつだ。小浜駅では「みどりの券売機プラス」が設置されていて,特に案内されていないがオペレーターを呼び出して申し込むことで,小浜発のJRバス若江線とJR西日本線の連絡乗車券を購入することができる。 発券したのがこのきっぷ。マルス券で経由欄に「自動車線」とあるのがバスから鉄道線への乗車券の証だ。若江線が鉄道の先行・短絡を目的としているのを体現するように,バスと鉄道が1枚になったきっぷが購入できるというのが面白い。
かつて(2010年代まで)マルスで発売可能なバスの普通乗車券は高速バスや一般路線バスなどで細々と残っていたが,現在取り扱っている路線は片手で数えられるほど*2。マルスの乗車券メニューから発券するバス乗車券はこの若江線と中国高速線くらいとなってしまった。
現在,JRバス若江線は交通系ICカードが利用可能で,きっぷを買わずとも IC カードがあれば京都方面にそのまま乗車可能だ。利用者数減少を理由に,いつバス連絡乗車券の取り扱いがなくなってもおかしくない*3。
JRバス若江線は小浜市街地を抜けて上中駅まで小浜線と並行して走り,上中から国道303号線へ。県境を越えて山を下ると今津の街に入る。小浜駅から1時間ほどのショートトリップだ。今回は往復乗車しているが,小浜~今津の県境越え区間でほぼ乗り通している利用者も多く見かけた。 余談だが,小浜市内では北陸新幹線に関するスローガンが多かった。計画中の北陸新幹線は敦賀から小浜を通って京都に向かう。かつての若狭街道のように,小浜と京都が直結する。北陸新幹線が京都まで開業したあかつきには若江線は役目を終えて大幅に縮小されるのだろう。まあ開業は2040年代なので20年以上先まで現在の交通体系が維持されているとは思えないが……。
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