きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

夜行バスとボンネットバスで岩手の名湯松川温泉にゆく

 道路網の発達とマイカー社会が進んだ現代において,人里離れた温泉地であっても鉄道やバス路線が維持されていることは少なくありません。「交通」は人びとがなんらかの目的をもって生まれる概念ですが,温泉地は「湯治」「レジャー」という目的をもって多くの人びとが向かうことから,秘境への路線網も維持されやすいのです。

 ところで,私は旅行のたびに温泉地に行くちょっとした温泉好きなのですが,こういうわけで温泉と公共交通はきってもきれない関係があります。この冬はどの温泉に行こうかと考えいたところ,旧型のボンネットバスに乗っていける温泉地があるとのことで行ってきました。その温泉地は岩手県八幡平市にある松川温泉です。

岩手県北バス 岩手きずな号 田町駅東口→盛岡駅西口

 松川温泉へは盛岡駅から1日3往復ある路線バスで向かうことになります。3往復のうち1往復は早朝に,2往復は昼間に運行。安価に移動できること,昼間の混雑を避けることなどから,東京から盛岡までは夜行バスで行くことにしました。

f:id:ashizin:20190310215218j:plain

田町駅東口で客扱い中の岩手きずな号

  盛岡への夜行高速バスは何本か運行がありますが,今回乗車したのは東京~盛岡・久慈を結ぶ夜行高速バス「岩手きずな号」です。別の夜行バスが満席だったこと,運行時間帯がちょうど良かったこと,盛岡から乗り換える路線バスの乗継割引を受けられる*1こと,などがありました。4列シートの車両で東京~久慈間を11時間かけて結ぶロングラン路線ですが,東京~盛岡間は8時間ほどです。

f:id:ashizin:20190310220210j:plain

岩手きずな号 盛岡駅に到着

 朝6時すぎ,盛岡駅に到着。電源・wifi つきでモバイル環境は申し分ないのですが,やはり4列シートということで窮屈さは拭えません。8時間という乗車時間の中で,眠りにつけたのは4時間ほどでした。

岩手県北バス 盛岡駅西口→八幡平マウンテンホテル→松川温泉

 盛岡駅NEWDAYS で朝食を仕入れ,東口から出る松川温泉への路線バスを待ちます。 松川温泉への路線バスは通常終点まで直通しますが,冬季は温泉への道路が急坂かつ凍結しているため,冬季に限って途中駅の八幡平マウンテンホテルから小回りがきくボンネットバスに乗り換えとなります。

f:id:ashizin:20190310222305j:plain

岩手県北バス 八幡平マウンテンホテルゆき

 盛岡駅に入ってきた八幡平マウンテンホテルゆきのバスは高速バスタイプの車両。通常の路線バス車で運行されることもあるようなので今回は当たりでした。

f:id:ashizin:20190310222920j:plain

バスの前方には岩手山

 盛岡から市街地を抜け,花輪線の大更駅を経由して八幡平温泉のリゾート地を抜け松川温泉へ。成層火山である岩手山の外周を1/3ぐるっと廻るように走る,停留所数88,距離55km,乗車2時間という一般路線バスにしては長めの路線です*2岩手山を眺めながらのんびりとバスの旅を楽しみます。

f:id:ashizin:20190310223701j:plain

八幡平マウンテンホテルでボンネットバスに乗り換え

  盛岡から1時間半ほどで八幡平マウンテンホテルに到着。冬季に限り,ここでボンネットバスに乗り換え。ここで松川温泉までの運賃を支払います。正規運賃1,140円のところ「岩手きずな号」の乗継割引が適用され570円となりました。

f:id:ashizin:20190317190354j:plain

ボンネットバスの外観

 いままで乗ってきた大型のバスの半分ほどしかない小さなボンネットバス。1968年製造後,生え抜きで岩手県北バスを走ってきたバスで,ナンバープレートの地名が旧表示で漢字一文字の「岩」になっています。

f:id:ashizin:20190317190431j:plain

ボンネットバスの車内

 車内はそのレトロな外観から想像する以上に年季が入っており,むき出しで所々黒くなっている内装がこの車両の歴史の長さをひしひしと伝わらせてくれます。

 車掌が乗務していた時代の名残のスペースがあったり,(当然ながらエンジンがボンネットに入っているため)バスが動き出すとエンジンの轟音が前方から響いてくるなど,いままで乗ってきた路線バス車両とは何もかも大違いです。

f:id:ashizin:20190317191056j:plain

ボンネットバスで一路松川温泉へ

 八幡平のリゾート地から松川温泉へは急坂が続く山道。冬場も除雪されるとはいえ,かなり積雪量の多い路線。ボンネットバスは急坂をエンジンを唸らせてゆっくり登っていきます。やがて細い道を降りて温泉宿の眼の前にある終点「松川温泉」バス停に到着です。

f:id:ashizin:20190317191931j:plain

松川温泉に到着

 東京を出て約11時間,3種類のバスを乗り継いで松川温泉に到着しました。バスを降りた瞬間からただよう硫黄のかおり。宿に入り外来入浴をしたい旨伝えると「ボンネットバスで来たのか」と尋ねられ,東京から夜行バスとボンネットバスを乗り継いで来たと説明すると納得され,たまに同じような行程で松川温泉まで来る客もいるとのことでした。

 温泉は白濁した濃い硫黄の温泉で,露天風呂に入るとぬるいお湯と外気の冷たさがマッチして良いお風呂でした。お宿も秘湯の宿らしく古風な佇まい。折り返しのバスが発車するまで1時間ていどと若干慌ただしい入浴となりましたが,ぞんぶんにこの温泉を楽しみました。