きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

モヤ700系に乗る!相鉄モヤ700系乗車体験会レポート

 2月11日(土)に相鉄にて「【出発進行!幸せの黄色い電車に潜入】モヤ700系乗車体験会」が開催された。相鉄線JR東海とのコラボレーション企画で,JR東海ツアーズの旅行商品として発売された。

 相鉄モヤ700系は,相鉄線での架線の測定をしたり,機関車の代わりになったりする特殊な電車である。その役割から,モヤ700系は一般利用者を乗せることを想定していない事業用車両となっている。私は相鉄線ユーザであり,モヤ700系も過去に撮り鉄したことがあるが,モヤ700は運行日を調べて狙って見に行かないと本線上での走行はなかなかお目にかかれない車両だ。そんな車両が土曜日に走るだけでなく,乗車することができるという特別なイベントである。そんなイベントは今後あるかどうかわからない。旅行商品の発売開始と同時にツアーを申し込んだ。

モヤ700系乗車体験会

 私が参加するのは午前・午後それぞれある回のうちの午後の部である。14時にかしわ台駅にある「かしわ台車両センター」に集合。受付を済ませると,指定席券代わりの「モヤ700系乗車記念証」をいただいた。D型硬券で,日付や駅名がハンコで捺されている。ハンコはかしわ台駅で実際に使われているものだろうか? 

モヤ700系乗車記念証

 なおモヤ700系のイベントは午前・午後ともにかしわ台駅発着のためこのような「補充式」の硬券にする必要はない。車両の特性からしかしわ台車両センター以外からの乗降は難しいので,記念要素として(よりマニアックにするために?)あえて「補充式」にしたのだろう。ハンコがすこし傾いているあたりも,硬券1枚1枚にハンコを捺していただいた相鉄の担当者の苦労がうかがえる。

かしわ台車両センターの立入禁止エリアへ。相鉄の車両たちが並ぶ。

 相鉄の係員に引率され,立入禁止エリアに入ってモヤ700がいる車庫へ向かう。道すがらには,車庫で留置中の相鉄12000系など,相鉄線で活躍する車両たちが並ぶ。鉄道関係者でなければこの視線で車両を見る機会は少ないので,この時点でテンションが上がってくる。

モヤ700系に乗車

モヤ700系に乗車

 そしてモヤ700系と対面し,ハシゴを使って乗車。相鉄の係員の方からはかなり寛大な対応をいただき,車内外の写真撮影を許可いただけた*1。ツアーの案内には「車内の探索はできません」とあったにもかかわらずである。私の指定はモヤ701~704の4両編成のうち,モヤ702の車両であった。モヤ702からモヤ703・モヤ704へは貫通路が無いので移動することができないが,モヤ701・モヤ702車内は比較的自由に見学することができた。以下に車内の様子を撮影した写真を掲載する。一部はかしわ台駅厚木駅で撮影したものも含む。

モヤ701の運転台

モヤ701の検測機器

検測機器の裏側

種車7000系から残るだろうプレート

相鉄特有の「鏡」はモヤ700車内にも残る。架線検測機器のスイッチと並ぶ。

モヤ702の車内。つり革が撤去されて車内は広々。
7000系時代の座席のほか,先代のモニ2000の座席も移植されているらしい。

 モヤ701は検測機器が搭載されているとりわけ特殊な車両だ。たとえばJR東海の新幹線検測車923形(ドクターイエロー)の内部がテレビで公開されても,検測機器は基本的に撮影 NG だ。鉄道事業者やメーカの企業秘密の塊だからである。しかし相鉄モヤ700系体験では自由に撮影 OK とのことで,あまりに太っ腹な対応に驚いて,本当に写真を撮っていいのかとおそるおそるシャッターを切った。

厚木線乗車体験と撮影会

 いよいよ乗車体験だ。私たちを乗せたモヤ700系は,独特なエアー音を奏でて,静かに動き出す。かしわ台車両センターから入換でかしわ台駅ホームへ据え付けられたあと,かしわ台駅から海老名方面へ。かしわ台駅からすぐの相模国分信号所ですぐに相鉄本線から離れて相鉄厚木線に入る。

相鉄厚木線と他線の位置関係。地理院地図に筆者書き込み。

 相鉄厚木線は相模国分信号所~厚木操車所をむすぶ路線だ。一般の営業列車は走っておらず,車庫代わりとなっている厚木操車所への回送列車や,車両メーカから発送された相鉄の車両が厚木駅で JR から引き渡されて厚木線を経由してかしわ台へ輸送される程度である。事業用車両であるモヤ700に乗りながら,非営業路線の相鉄厚木線を走るという特別感は,これにまさるものはない。

相鉄厚木線から見る小田急海老名検車区

 相鉄厚木線は相模国分を通過すると,すぐに小田急線をまたぎ,小田急海老名検車区の西側を走る。やがて JR 相模線の海老名駅のあたりから JR 相模線と並行しそのまま厚木操車所までぴったり寄り添うような線形で厚木操車所まで向かう。JR 海老名駅付近では相鉄厚木線を海老名駅ペデストリアンデッキが跨いでいるが,ここは大量の撮り鉄であふれていた。外観は通常の検測時とほぼ同じモヤ700系であるが,土曜日のモヤ700運行は珍しいため,かなりの人出となったようだ。

モヤ700車内から,モヤ目当ての撮り鉄を眺める

 厚木操車所へ到着すると体験会参加者向けの撮影タイムだ。モヤは写真が撮りやすい位置へ,所定停止位置からすこし移動。所定停止位置だとどのような点がまずいのかはわからないが,相鉄の担当者の方の心配りがうれしい。

モヤ700系@厚木操車所

青空に黄色い車体のコントラストが映える@厚木操車所

 すでに撮り鉄は引退済みだが,モヤ700系を,ましてや操車所の中で撮影できる機会はなかなかない。思う存分に写真を撮らせていただいた。モヤに装備されている方向幕を「貸切」「検測」などに変えたり,ワイパーや前照灯の状態をアレンジしたりなど,相鉄の担当者の方は撮り鉄のオーダにもできる限り応えていて,非常にマニアックな撮影会だった。

モヤ700系の「方向幕」。幕はロール状ではなく,1枚1枚差し替えて掲出する。

モヤ700系乗車 厚木→羽沢横浜国大→かしわ台

 撮影会終了後は厚木操車所→羽沢横浜国大→かしわ台の行路で相鉄本線を走行する。厚木から羽沢横浜国大へは途中駅ノンストップで走行。瀬谷駅までは特急列車の後を走っていて,モータを唸らせながらトップスピードで走行する場面もあった。瀬谷駅から先は1分遅れの JR 直通各停の後を走るため,羽沢横浜国大駅までノロノロ運転。とはいえ特急停車駅である大和も,二俣川も,西谷もすべて通過してしまうシーンを車内から眺められた。

 羽沢横浜国大駅で折り返し,かしわ台駅へは瀬谷駅で3分停車する以外はこちらもノンストップ。やはり先行列車に追いついてしまいノロノロ運転ではあったものの,特急停車駅を通過する爽快感を復路も味わうことができた。

旅行後記

 モヤ700系は事業用車両であり,ツアーの案内にも「車内の探索はできない」と記載されていたので,正直言ってモヤ車内に入って着席したら基本的には身動きがとれないものかと思っていた。それでもモヤ700に乗って本線を乗車できるだけで十分楽しみな内容だった。ところが実際には停車中であれば同一編成内であれば見学も写真撮影も OK で,事業用車両なのにこんなに太っ腹な内容で良いのかと,参加した私のほうが恐縮するほど,非常に濃厚でマニアックな体験だった。今回のツアー代金は1人20,000円とやや値が張ったものの,その価格を上回る価値を得られて非常に満足なツアーだった。

 ツアー終了後のJR東海ツアーズのアンケートには,「今後,鉄道会社とのコラボレーション企画をするならどのような内容がよいか」(大意)という質問もあった。今後も,相鉄モヤ700系乗車体験のような,マニアックな体験ツアーがJR東海ツアーズから発売されることを期待したい。


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*1:車内撮影や見学は駅や車両センタ内の停車中のみ

JR七尾線観光列車「花嫁のれん」号乗車レポート

 時系列的には前回・前々回の記事の続きとなる。「のと里山里海」号を穴水で下車したあと,行程の都合で奥能登観光はせず和倉温泉駅まで普通列車で戻る。

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 和倉温泉駅からはJR七尾線の観光列車「花嫁のれん」号に乗車する。

 特急「花嫁のれん」号は金沢〜和倉温泉間で1日2往復運転されている観光列車だ。その名前の由来は能登・加賀・越中で江戸時代末から見られる,嫁入りする娘に対して幸せになれるよう願ってのれんを贈ったことにちなむという。

花嫁のれん」号

 列車はキハ40系を改造した専用車両の2両編成。第一印象では漆塗りの重箱のような高級感のある車両だなと思っていたところ,同行の知人が「スーパーで売っている寿司のパックだ」などと言っていたせいでそのようにしか見えなくなった。

 列車内の座席も高級感のある内装で,2人がけ,3人がけ,4人がけのテーブル席のほか,窓に面したカウンター席もあり,1号車のテーブル席は半個室風に。おひとり様からグループまで,さまざまな旅のスタイルに対応している。

花嫁のれん」号の車内の様子。左は1号車,右は2号車。

 JR西日本の観光列車は窓枠があっていない「ハズレ席」がよくあるのだが,花嫁のれん」については2号車4A番,2号車5A番は視線の先が窓ではないハズレ席だ。また,えきねっと・e5489などのネット予約が可能だが,シートマップからの選択ができない。希望の席が決まっていればみどりの窓口等での座席指定が無難だ。

 また,半個室風の席でも個室単位の発売ではなく1席ずつの発売となるため,発売状況によっては他グループと相席になりうるので注意したい。

2号車4A番(中央)はハズレ席。私が利用したのは右隣の2号車4B番。

 今回は和倉温泉を昼過ぎに発車する「花嫁のれん」2号に乗車。私がみどりの窓口で指名買いしたのは窓に面したカウンター席の2号車4B番で,ハズレ席を外したので景色もまずまず。

 七尾を発車するとあらかじめ予約しておいた和軽食セットが到着。軽食といっても,金沢にある老舗高級料亭「大友楼」が調製した高級感のあるお弁当で,ランチとしてはほどよいボリュームになっている。七尾線の車窓を見つつ地元食材をふんだんに使ったお弁当をいただけるのはなかなか良い体験になった。

花嫁のれん」号の和軽食セット

 このお弁当をいただくには乗車4日前までに予約が必要だ。以前はみどりの窓口で「花嫁のれん」の特急券を購入するのと同時に食事券として購入できたが,2023年春からはJR西日本の tabiwa というサービスから予約する必要がある。席は紙のきっぷなのに食事はオンラインというシームレスではない予約方法は,片手落ち感があり非常に残念だ。みどりの窓口での発売を再開するか,e5489 等で座席指定できる状態でチケットレス予約ができるようにしてほしい*1

 列車は1時間15分で金沢に到着。「花嫁のれん」2号は列車内や途中停車駅での体験イベントは車内での記念撮影などを除いて特にない。アテンダントのおもてなしも「花嫁のれん」の特徴であったが,和倉温泉の旅館「加賀屋」のスタッフからJR西日本のスタッフに変わったことも影響しているのか,特に良いとは思わなかった。お弁当がなければ手持ち無沙汰になるかもしれない。

乗車雑感

 「花嫁のれん」号は,内外装の高級感から期待されるほどのサービスは(お弁当を除いて)なかった。車窓についても,七尾線の田園風景は「花嫁のれん」号の貴重な観光資源であるが,のと鉄道区間で見られるような里山・里海の景色などはあまりない。また,車内での体験がないほか乗車時間も短く物足りなさも感じた。

 2024年元日の能登半島地震により,現在も「花嫁のれん」は運休している。こうして記事を書いているうちにJR七尾線の復旧は進み,2月15日には七尾・和倉温泉間が復旧してJR七尾線は全線復旧となるが,「花嫁のれん」の再開は未定だ。当初の計画では北陸新幹線敦賀延伸にあわせて運転日が増えたり,食事メニューが選べるようになったりするようだ。


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*1:e5489 でチケットレス予約することは可能だが,シートマップからの座席指定ができない

のと鉄道「のと里山里海」1号乗車レポート

 時系列的には前回の記事の続き。

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 2023年12月,大阪から特急「サンダーバード」17号で和倉温泉に到着した私たちは,そのまま和倉温泉の温泉宿に宿泊した。

 和倉温泉も今回の能登半島地震で例外なく大きな被害を受けた。私が宿泊した小さな温泉宿はリノベーションされていたが,構造としては古そうな構造の建物だった。宿泊した温泉宿が地震によってどのくらい被害を受けたのか,いまでは知るすべがない。

和倉温泉駅

 翌日,和倉温泉を宿を出てふたたび和倉温泉駅へ。この日はのと鉄道の「のと里山里海」1号に乗車する。

 のと鉄道は七尾~和倉温泉~穴水間*1で運行されている第三セクター鉄道だ。旧国鉄七尾線能登線を引き継ぎ,かつては能登半島の先端,奥能登にある輪島市珠洲市まで線路を伸ばしていたが,その後の経営悪化により穴水から先の輪島・珠洲方面が廃線になり,今に至る。

 「のと里山里海」はそんなのと鉄道で2.5往復運行されている観光列車だ。

「のと里山里海」1号 和倉温泉駅にて

 「のと里山里海」は「里山車両」(NT301)と「里海車両」(NT302)の2両編成で運行されることが基本だ。このときは「里山車両」が重要部検査中で運用から外れていたため,里海車両+普通車両の2両編成で運行され,普通車両は締切となっていた。

のと里山里海号の乗車(料金)券

 「のと里山里海」は通常 WEB で予約可能だが,現在は感染症対策のため電話予約のみとなっていて,乗車人数にあわせてボックス席やカウンター席など,相席にならないよう座席の割り振りが行われていた。「のと里山里海」は乗車のみのプランや食事つきのプランなどあり,それぞれのプランに応じて乗車券のほかに料金が必要だが,乗車のみのプランであれば当日乗車時に料金を支払えば良い。

「里海車両」の車内。6人がけ海向き席に着座。
右画像は能登中島~西岸間にある中島町深浦の漁村が見れるビュースポットにて。

 里海車両は青色基調の座席になっていて,能登内浦の穏やかな海の車窓とよくマッチしている。私達が着席したのは「里海車両」に1ボックスだけある6人がけの海向き席。山側に配置されているが床面が少し高くなっているため,海向きカウンター席に座っている人ごしに能登内浦の景色がよく見えた。

能登中島駅で13分停車して郵便車の見学ができる

 「のと里山里海」1号は能登中島駅で13分停車。当駅で静態保存されている鉄道郵便車オユ10 2565の車内見学ができる。郵便車の内部をまじまじと見る機会はなかなか無く,車内で郵便物を仕分けるところがあるなど,現代の鉄道には無い設備を興味深く見学できた。

特別な風景印

 オユ10 2565には観光客向けにポストが設置されている。私も「のと里山里海」車内で配布されていたポストカードに乗車記念スタンプを捺して自宅に郵送した。到着まで時間がかかったが,ポストカードはオユのポストに投函しないと捺されない特別な風景印で消印されていた。

車窓から見える「ボラ待ちやぐら」

 能登中島駅を発車した「のと里山里海」1号は能登中島~穴水間に3箇所あるビュースポットで停車しながら,穴水へ。車窓には能登内浦と漁村の町並みが映り,天気は悪いが癒やされる風景であった。途中駅の能登鹿島駅では,ホームに一面の桜が咲くのだという。今回の能登旅行は乗り鉄仲間との旅行であったが,嫁とは北陸新幹線延伸開業後に能登に行こうと話をしていてから,来春に能登鹿島駅の桜を見に嫁とのと鉄道にまた乗るのも良いななどと,車窓に思いを馳せた。

穴水駅に到着

 やがて列車は終点の穴水駅に到着。アテンダントの方のお出迎えを受けながら,列車を降りる。和倉温泉駅から55分とやや物足りなさはあるが,美しい能登の風景と郵便車見学ができて満足の列車旅となった。

あとがき

穴水駅

 のと鉄道能登半島地震によって大きな被害を受けた。七尾~能登中島間については2月中旬の運行再開を見込んでいるが,能登中島駅~穴水駅間については運行再開の見込みも立っていない(1月26日時点)。のと鉄道Facebook を見ると,べこべこになった穴水駅ロータリーやホーム,歪んだ線路など,悲惨な被害状況を示す写真が投稿されている。

 能登中島駅の桜が咲くころに列車はまだ動いていないかもしれないが,全線運行再開のあかつきには,またのと鉄道「のと里山里海」号に乗って能登の旅に行こうと思う。


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*1:七尾~和倉温泉間は JR 西日本との共用区間

和倉温泉行き特急「サンダーバード」17号 乗車レポート

 2024年1月1日に発生した能登半島地震で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げる。発災からまもなく3週間となるが,まだ避難を強いられている方が多くいることに心を痛めている。

 私は偶然にも発災1ヶ月前の2023年12月に和倉温泉行き特急「サンダーバード」17号に乗車して,和倉温泉へ行っていた。そのときの乗車雑感をレポートしたい。

特急「サンダーバード」17号@和倉温泉駅

特急「サンダーバード」17号 大阪→和倉温泉

列車名 大阪 *1 和倉温泉
サンダーバード17号 10:42 14:30

特急サンダーバード17号 時刻表

 今回は始発の大阪駅から終点の和倉温泉駅まで乗車する。大阪駅は特急専用の11番のりばから発車する。大阪から和倉温泉までは4時間弱。「サンダーバード」には車内販売も無いので,ホームにある駅弁屋や売店で駅弁と酒,おつまみを調達してから列車に乗り込む。

大阪駅11番のりばから発車

 大阪駅を定刻の 10:42 に発車。京都を過ぎたら,山科から湖西線に入って列車は最高速度130kmで快調に飛ばす。今回は乗り鉄仲間との旅行だったため酒を片手にグループで談笑していたこともあり,福井県に入って敦賀に着くのもあっという間に感じられた。来春からは「サンダーバード」はすべてこの敦賀駅止まりとなり,金沢方面へは新たに敦賀まで延伸する北陸新幹線に乗り換えることになる。

 敦賀を出て北陸トンネルを抜けると,雪でところどころ地面が白くなっているところがあった。山はほとんど真っ白で,冬の訪れを感じられる。12:56 に片山津温泉山代温泉などの玄関口である加賀温泉駅に到着すると,多くの人の下車があった。和倉温泉に行く人も含めれば,「サンダーバード」17号は関西圏から温泉地への旅行者にとっては使いやすい列車なのかもしれない。

金沢駅にて

 金沢で9両編成の「サンダーバード」の後ろ3両(金沢止)を切り離す。金沢で乗車していた車両のほとんどの人が下車し,入れ替わりでたくさんの人が乗ってきた。金沢市内からや北陸新幹線からの乗継から和倉温泉方面へ向かう人たちなのだろう。目で見える範囲では和倉温泉への直通利用が少なかったのが意外だった。

 金沢からIRいしかわ鉄道を経由して七尾線に入る。単線の能登路を1時間ほど進めば終点の和倉温泉駅に到着だ。

列車から降りた人たちはそのまま旅館の送迎バスへ

 和倉温泉駅無人駅となっていて,列車から降りても改札には誰もいない。駅の中も,待合室に観光案内所があるほかは静まり返っていて,大阪駅から直通する列車の終着駅としてはなんとも呆気ない佇まいになっていた。列車から降りた人たちはそのまま駅の外に待機している旅館の送迎バスに吸い込まれていった。

乗車雑感

和倉温泉駅にて

 「乗り換え」は公共交通機関を利用するうえで利用者が障壁に感じることのひとつだ。今回,大阪から和倉温泉まで直通で乗り通したが,4時間という乗車時間を感じさせられないほど快適だった。来春の北陸新幹線開通後は大阪から和倉温泉に鉄道で行く場合,料金が値上げするうえに乗り換えが2回発生することになる。そうなると駅弁はどの区間で広げようか?ゆっくり休めるだろうか?少なくとも私なら大阪から和倉温泉まで鉄道だけで行くということは考えにくくなるだろう*2整備新幹線建設の功罪の悪い点を,「サンダーバード」17号は思いっきり被ることになる。

 能登半島地震により,七尾線は大きな被害を受けた。1月19日現在は羽咋和倉温泉間が運転を見合わせていて,特急「サンダーバード」17号も全車両金沢止まりとなっている。1月22日に羽咋・七尾間が再開,2月中旬に七尾・和倉温泉間(のと鉄道能登中島間)も運転再開予定だ。1月22日には特急「サンダーバード」17号も和倉温泉の1駅手前,七尾駅まで運転再開する。七尾線の運転再開により,能登半島の復興が加速されることを願う。


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*1:途中停車駅:新大阪,京都,敦賀,福井,芦原温泉加賀温泉,金沢,羽咋,七尾

*2:実際に,北陸新幹線延伸により和倉温泉の関係者は関西圏の利用者が離れることを危惧している。大阪―和倉3割高 新幹線敦賀開業後、1万2050円|経済|石川のニュース|北國新聞

小田急ロマンスカー「ニューイヤーエクスプレス」1号で初日の出を拝む(2024年)

 新年明けましておめでとうございます。

 2024年の始まりの日から大きな地震や航空事故が発生し,心を痛める正月となった。

 今年も年始は小田急ロマンスカー「ニューイヤーエクスプレス」1号に乗車して片瀬江ノ島まで行き,江の島付近で初日の出を拝んできた。

列車名 新宿 *1 大和 藤沢 片瀬江ノ島 列車編成
ニューイヤーエクスプレス1号 04:50 05:43 06:07 06:13 EXE10両

「ニューイヤーエクスプレス」1号時刻表

 今年の「ニューイヤーエクスプレス」1号は比較的遅めのダイヤ。昨年は相鉄の下り初電*2から乗り継ぎできなかったが,今年は余裕で乗り継ぐことができた。

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 大和駅から乗車すると,「ニューイヤーエクスプレス」1号はやけにゆっくり走っている。先行を走る臨時急行8151レ*3相模大野駅時点で2分続行という通勤ラッシュ顔負けの運転間隔のまま運行しているが,この先の藤沢駅スイッチバック駅となっていて,10両編成がスイッチバックできる線路は1線しかない。

「ニューイヤーエクスプレス」1号 藤沢駅にて

 先行する8151レが藤沢駅から発車してから「ニューイヤーエクスプレス」1号が藤沢駅に入線できるようにゆっくり運転しているらしく,大和→藤沢間を8151レは途中2駅停車しながら14分で運行するものの,「ニューイヤーエクスプレス」1号は途中無停車で17分かかる鈍足っぷりであった。その後8151レは藤沢駅発車が遅延したらしく,「ニューイヤーエクスプレス」1号は藤沢駅手前で数分停車した。

「ニューイヤーエクスプレス」1号 特別急行*4

 今年も「ニューイヤーエクスプレス」1号はほぼ満席。先行する各駅停車や臨時急行はかなりの混雑だったため,あらかじめきっぷを買っていた甲斐があった。

片瀬東浜からみた初日の出

 片瀬江ノ島駅に到着した頃には空が明るくなり始めていた。そのため江の島島内には入らず,江の島大橋手前の片瀬東浜で初日の出を拝む。2024年も良い年であることを祈る。


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*1:この間の停車駅:新百合ヶ丘,町田,相模大野

*2:二俣川始発の列車

*3:定期の急行列車1501レが藤沢~片瀬江ノ島間で延長運転した列車(10両編成)

*4:スキャナが不調で白黒になっている

全車指定席化で快適な年末年始の「のぞみ」号乗車レポート

 2023年12月28日から2024年1月4日にかけての年末年始の東海道・山陽新幹線「のぞみ」号は,指定席予約数を増加すること,ホームでの混雑を緩和したり乗降に時間がかかり列車が遅延するのを回避することを目的に,全車指定席となっている。

 「のぞみ」の1号車から3号車の約250席が指定席化し,のぞみ12本ダイヤによって1時間あたり3000人が着席機会を得られることになる。また,全車指定席となっても,自由席特急券でのぞみ号のデッキ等で立席利用することも可能だ。「こだま」「ひかり」は従来どおり自由席が設定されている。

 今回,中京地区へ日帰り旅行のため12月30日の「のぞみ」を利用してきた。

のぞみ491号 新横浜→名古屋

 今回の旅行は年末のピーク期間にあたるため,座席が取れなければ行かないつもりだった。しかも,旅行を考えていたのは前日の夜。嫁と2人旅行であるが,年末年始の「のぞみ」で,これまで直前に2人並びの席を確保できることは困難だった。しかし予約状況を見ると思いのほか満席の列車は少なく,2人並びの席を確保することができそうだ。前日の夜だったが EX 予約で座席を確保した。

年末年始は全車指定であることの案内とホームの発車標

 乗車するのは早朝に設定されている新横浜始発の臨時「のぞみ」491号だ。新横浜駅に到着すると,早朝とは思えないほど駅コンコースは混雑しているが,ホームでの混乱は無い。せいぜい売店に長蛇の列ができている程度だ。

 駅では「17時ごろまで満席」と案内していたが,新横浜~名古屋間で満席となっている列車は限られ,ほとんどが「△」の空席わずかという状況だった。

「のぞみ」491号に乗車

 座席はきっぷマニアとしては当然,ふだんは自由席のところを選ぶ。1号車1番が空いていたのでこちらをチョイスした。新横浜始発のため,都内からの利用者が少なく,年末年始の列車とは思えないほど空いていた。

「のぞみ」491号の新幹線特急券

のぞみ244号 名古屋→新横浜

 帰りの新幹線は旅行帰りの名古屋駅に着いてからきっぷを購入した。直近の列車だと,さすがに窓側の2列並び(A/B席,D/E席)で取ることはできなかったが,空席が多く B/C 席の並びでは取ることができそうだ。

のぞみ244号の新幹線特急券(喫煙ルーム付近)

 直近で発車する予定だった「のぞみ」244号に乗車する。座席は3号車の一番後ろの席を確保。指定席であれば一番後ろの席は「特大荷物スペースつき座席」となっているが,通常は自由席の車両であり特大荷物スペースの標示などがないため,一般の指定席として発売されたようだ。

乗車雑感

 年末年始の新幹線は私はなるべく利用しないように避けてきた。駅は混雑するし,なによりまともな座席の予約すら難しいことがあるからだ。今回はピークタイムを外しているうえに「のぞみ」の一区間のみの利用ではあったが,「のぞみ」全車指定席化によって思った以上に空席があり,快適に旅行することができた。ちなみに,ニュースや SNS 等を見る限りでは,ピークである29日も大きな混乱はなかったようだ。

 全車指定席化によって自由席利用者は料金が上がるため,自由席利用者にとっては値上げとなる*1ことの批判がある。EX 予約でもシーズン別料金が導入され,正直言って新幹線の料金は安くない。ただし,今回のように全車指定席化によって利用者が分散され,ピークタイムに比較的快適に利用できるのであれば,利用者にとってもメリットとなる。年末年始などに限って全車指定席となるのは悪くない施策だろう。


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*1:一部日程は最繁忙期料金のため,指定席相当額520円に加えて400円加算となる

スペーシア八王子きぬ号 乗車レポート

 「スペーシア八王子きぬ」号は八王子~(武蔵野線経由)~鬼怒川温泉間で運転される臨時特急だ。同じく八王子発で日光行きの「スペーシア八王子日光」号とあわせてシーズンごとに何日か散発的に運転されていた。

 9月23日に運転された「スペーシア八王子きぬ」号に乗車してきたので簡単にレポートしたい。

列車名 八王子 立川 新秋津 北朝霞 *1 鬼怒川温泉
スペーシア八王子きぬ 09:40 09:53 10:11 10:21 12:16
16:20 16:10 15:54 15:43 13:40

スペーシア八王子きぬ 時刻表

スペーシア八王子きぬ号 八王子→栃木

八王子駅にて

 八王子駅に到着すると,すでに「スペーシア八王子きぬ」号は到着していた。特急「あずさ」やJRの通勤電車が行き交う八王子駅に,東武特急のかつてのフラッグシップである100系スペーシアが居るのは違和感しかない。30年前のものとは思えぬ未だに色褪せないデザインは,中央線ユーザの衆目を集めており,スマホなどで写真を撮る人も目立つ。

スペーシア八王子きぬ」のB特急券

 スペーシアは車内もバブリーで,現在の JR 東日本であれば有り得ない肉厚のシートに大きな窓がうれしい。しかし発車前から,車掌がしきりに「○号車のトイレと洗面台は水が出ません……」とアナウンスしている。この日だけの臨時列車なのだから修理してから八王子に送り込んでほしいなと思いつつ,100系スペーシアも製造から30年以上経っている電車で,いろいろなところにガタが来ているのだろうと想像してしまう。

「あずさ」などと並ぶ「スペーシア八王子きぬ」

 八王子駅を空席多数で発車した「スペーシア八王子きぬ」は,オレンジ色の中央線電車とすれ違いながらしばらく中央線上る。立川で客扱いし,国立からは支線に入って武蔵野線へ。武蔵野線内でも新秋津と北朝霞で客扱いを行う。

 武蔵野台地に似つかわしくないスペーシアの突然の登場に,ホームで普通列車を待っている人の目を丸くした姿が見える。武蔵野線内から乗ってきた人は「今日だけ鬼怒川温泉に行く特急が走っているんだ」などと言っている。東武東上線とクロスする北朝霞を出ると,JR 線内の客扱いは終了。車内を見渡すと6割~7割ほどで,空いてもなく混み合ってもいない,ちょうど良い乗車率だった。

武蔵野線内のひとコマ

 西浦和から再び貨物支線を走り,大宮で運転停車して運転士交代。東北線に入ると定期列車の新宿発着「スペーシアきぬ」号などと同じルートで鬼怒川へ向かう。

栃木駅にて

 このあと宇都宮方面に行く予定だったため,栃木で下車。栃木ではスペーシアXの浅草行きの列車と同時に発車していった。

乗車雑感

 東武特急「スペーシア」は首都圏の東側からの集客が強みだったが,西側からの集客に課題があり,JR 東日本とタッグを組んで新宿乗り入れを実現させた。「スペーシア八王子きぬ」号はさらに集客エリアを西側にずらして武蔵野・多摩方面からの集客を企図した列車と思われるが,運転日がまちまちだった割には武蔵野線内からは意外と乗ってくる人が多かったように見え,スペーシアと日光・鬼怒川のブランド力の高さを感じた。

 本文中にもあるように,100系スペーシアは見た目のわりに古い電車なので,そのうちスペーシアXに置き換わるだろう。まだ元気なうちに武蔵野線を走る「スペーシア」に乗れたのは貴重な体験だった。

 なお,2023年秋臨からは「スペーシア八王子きぬ」「スペーシア八王子日光」の設定が無い。今後の運行計画にも注目したい。


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