きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

「SL鬼滅の刃」無限列車乗車記

    『鬼滅の刃』は社会現象になっているほど話題になっている漫画です。JR 九州では7月豪雨で肥薩線が不通となり、SL 人吉号で使用しているハチロクこと蒸気機関車58654号機と50系客車が使われない状態になっています。そこで現在公開中の映画『鬼滅の刃 無限列車編』とコラボして、「SL鬼滅の刃」が熊本→博多間片道1本が11月の日曜・祝日に運転されることになりました。

 漫画で重要な舞台となる「無限列車」を実際の鉄道で走らせてしまうという驚きもありましたが、一般的にはローカル線の田園地帯や山間部で走らせがちな SL 列車を熊本・博多間の都市間で結ぶ点についても驚きました。『鬼滅の刃』は筆者も好きな作品でしたので、運転決定のニュースを知って即座に旅行を決定。

 運転初日の11月1日の1ヶ月前、10月1日に信頼している駅へ出向き、10時打ちを依頼。「さすがに取れないかも…」と言われましたが、無事に連れの分も含めてきっぷを取ることができました。報道によると、発売開始1秒で売り切れたそうです。

 


 SL 鬼滅の刃号 熊本08:35 → 博多13:04

熊本発が朝8時と早いため、熊本には前日入り。熊本駅に入線する08:23の少し前に駅へ向かったところ、SL が入ってくるホームは人・人・人。地元警察も警備にあたるほどの混雑っぷり。SL は操車場から回送される途中で点検があり10分弱の遅れで入線してきました。

 

 もともと熊本駅で SL が停車している時間は定刻でも10分程度と少ないのですが、今回は遅れて入線してきたのでかなり忙しない感じでした。

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熊本駅では時間がなく、サボを撮る程度が精一杯

  列車の写真を撮る間もなく「無限列車」に乗り込みます。乗車する際に当日有効の指定券のチェックが行われており、ただしくきっぷを持った人だけしか乗れないようになっていたので外の喧騒に対して落ち着いた感じでした。鉄道オタクばかり乗っている悲しい車内を想像していましたが、鬼滅ファンの家族の方もそれなりに見受けられました。

  多くの人に見送られながら熊本駅を出発。汽笛を奏でながら鹿児島線をゆっくりと博多へ向かいます。車内を見渡すと事前の発表の通り基本的には「SL 人吉」の客車の内装のままでしたが、のれんが『鬼滅の刃』のキャラクター我妻善逸の羽織りの柄になっていたり、展望ラウンジのベンチが同様に胡蝶しのぶの羽織りの柄になっていたりするなど、ところどころに『鬼滅の刃』をモチーフにしたものとなっていました。

  

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我妻善逸の羽織り柄ののれん

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展望ラウンジのベンチにも鬼滅キャラクターの柄が

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車内に飾られているフォトフレームもよく見ると・・・

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SL文庫も『鬼滅の刃』一色に

編成は牽引機の58654を先頭に、50系客車が博多方から3号車、2号車、1号車。さらに補助機関車の DE10 が連結されます。熊本駅を出てほどなく、いちばんうしろの1号車の展望ラウンジで物販が始まりました。この列車内でしか買えない限定グッズなどもあり、1号車から2号車の先まで物販の列が形成されて満員電車状態に…。在庫はそれなりにあったようでしたが、混雑を避けて遅れて物販の列に並んだところ、おしゃれなデザインでちょっと欲しかった限定マグカップが並び途中で品切れとなってしまいました。

 

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限定マグカップ(写真は展示品)

 列車は沿線や駅で無限列車を見にきた鬼滅ファンたちに手を振られながら、植木駅に停車。この駅で後続列車の退避などが行われます。SL は30km〜40kmくらいしか出さないので譲らないと後ろがつかえてしまうのです。このような運転停車が時刻表上の客扱い駅のほかに植木、長洲、羽犬塚と弥生が丘であり、それぞれが数十分のけっこう長い停車時間となっていました。見物に来るならこれらの駅のほうがよいかもしれません。

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久留米駅は見物客で大混雑

  熊本を出て約3時間、久留米駅に到着。ここでは約30分間の停車があり、ホームから文字通りあふれんばかりの鬼滅ファンが集っていて、さかんにSLの写真を撮っていました。熊本駅でほとんど撮る時間がなかった乗客たちもこの時間に撮影タイム。私もようやくこのタイミングで無限列車を見ることができましたが、「無限」のプレートがあんがい機関車とあっています。

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「無限」プレートがカッコいい

  その後は鳥栖で客扱い後、列車は一路博多へ。福岡都市圏に入るにつれて、沿線で手を振るファンの人もどんどん増えていきます。通過駅ではたくさんのファンが出迎えていて、SL が何度も汽笛を鳴らして走っていきます。弥生が丘で運転停車をしたあとはノンストップ。九州最大のターミナルである博多に SL のまま入るとは思えなかったのですが、本当に SL のまま突っ込んでいくとは…。博多には何千人ものファンが待ち受けており大変な賑わいになっていました。

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博多駅に到着した「SL鬼滅の刃号」

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たくさんの鬼滅ファンに出迎えられる

あとがき

  今回幸運にも「SL 鬼滅の刃」に乗り合わせることができましたが、その車窓から見えたのは無限列車を見にきたたくさんの人たちの手を振る姿や歓声、笑顔でした。私はいち乗客として乗っているに過ぎませんでしたが、沿線の鬼滅ファンの人たちを幸せにさせたこの列車に乗れたことを光栄に思います。

  一方車内のイベントはたいしてなく、先述のちょっとした内装の変更や限定商品の物販、記念乗車証のプレゼント程度です。紙の時刻表に載らないほど急な運転計画の発表だったため、企画もあまり時間がかけられなかったのではないかと想像できますが、4時間半の乗車時間には少々退屈なところもありました。「ゆるキャン△梨っ子」号のようにキャラクターの声優を使った案内放送や、作中でキーとなるきっぷを使った演出などがあるのではないかとは思っていましたが、期待しすぎだったようです。乗っている人ももっと楽しめるコトがあればなお良かったと思います。