きっぷ片手に旅をする

公共交通利用が中心の旅行記がメイン。月3回程度のペースで定期更新中。

さらば国鉄キハ58系 いすみ鉄道の国鉄気動車列車に乗る

 いすみ鉄道で走る国鉄急行型車両キハ58系グループの最後の動態車両であるキハ28-2346が,11月27日をもって定期運行を終了する。

 キハ28-2346は1964年帝國車輛製で,御年58歳と鉄道車両にしては古豪にあたる。国鉄JR西日本時代は鳥取や富山など日本海側で活躍したらしく,2000年代後期の高山本線での社会実験事業での増発のため活躍したのち,2013年よりいすみ鉄道にて観光急行列車として運行されている。

高山本線のキハ58+キハ28(おそらくキハ28-2346)2008年頃。

 高山本線時代のキハ28-2346は私も2008年頃に撮影・乗車していたらしく,古い写真に残っていた。その後いすみ鉄道に移ってからも何度か撮影・乗車している,(私にとっては)縁のある車両だった。引退の報をうけて,いすみ鉄道へ行く機会を伺っていたところ,今月末の引退ギリギリのタイミングではあるが海外出張帰りの嫁を成田空港に迎えに行くついでにいすみ鉄道を訪問できる道筋がたった。

 

 空港への迎えのついでなので,邪道だがクルマでいすみ鉄道の拠点である大多喜に向かう。アクアライン東京湾をわたり,圏央道市原鶴舞ICから20分ほどで大多喜駅に到着。大多喜にはこれまで鉄道でしか行ったことがなかった分,高速道路でのアクセスのよさにクルマの有利さを思い知らされる。

 キハ28-2346とキハ52-125の編成で走る国鉄気動車列車(急行列車)は

大多喜―101D→上総中野―102D→大原―103D→大多喜

の順で運用される。今回狙うのは大多喜始発の101Dだ。駅前にある町営駐車場にクルマをとめて駅に入ると,ローカル線の駅にしてはやけに人が多い。よく見たらキハ28の乗車位置には列が形成されていたのでそそくさと並ぶ。このときは10人ほどが並んでいたが,やがて大原と上総中野からそれぞれ列車が到着すると,あっという間に駅の外まで列が伸びた。駅員によって整理されているから混乱はないものの,キハ28-2346の人気ぶりをうかがい知ることができた。

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 そしてキハ28-2346に乗車。青いモケットのボックスシートが並び,広告類は国鉄当時のもの。現代の鉄道車両の風景とはかけ離れた昭和の景色が広がる。窓枠にはJRかそれ以前の時代の落書きが残され,この車両の歴史を色濃く映す。いすみ鉄道に入ってから追加されたであろう,Wi-Fi と SOS ボタンのステッカーが逆に浮いている。

キハ28-2346の車内

 独特のエンジン音を奏で,ゆるやかに発車。『アルプスの牧場』の歯抜けなチャイムに続いて車内アナウンスが始まる。大多喜発上総中野行きの101Dは各駅停車の普通列車。駅につくごとに観光案内を兼ねた車掌からのアナウンスがある。ローカル線のワンマン運転が標準になってきた昨今ではこれも珍しい体験になりつつあるのかもしれない。

駅のミラーには国鉄色。記念に買った準常備式の急行券とで雰囲気は抜群だ。

 何駅か小さい駅を過ぎると20分ほどで上総中野に到着。あっという間だが濃厚なひとときだった。

102D 上総中野にて

 上総中野でも102Dに乗る人の行列は駅の外まで伸びていた。私はもう101Dで満喫したし大多喜までしか乗らないので,最後部に並んで適当に乗車する。当然座席はいっぱいだから,大人しく吊り革につかまる。これも昔の賑やかだった頃のローカル線だと思えば趣がある。途中で車掌(旅客案内係?)が検札に来たから無札で乗車している旨申し出て乗車券を買う。カーボンで記入する補充券だが,車掌にきっぷを書いてもらうという体験が良い*1

大多喜にて 102D

 予定通り大多喜で下車。大原に向けて発車する102Dを見送って駅を出た。その後はせっかくクルマで来ているから,折り返しの103Dを撮影するべく線路際へ。

103D 新田野付近

 こうやって線路際に立って列車の写真を撮るのは久しぶり。写真の腕はおいといて,最後にキハ58系の乗り撮りができたので後悔はない。

 

 この日のいすみ鉄道は,乗車していても沿線にいてもキハ28-2346目当ての鉄道マニアでいっぱいだった。キハ28-2346の定期運用はあと5回。ラストランに近づくにつれてさらにマニアは増えると思われるので,気になる方はお早めに。

 

 

*1:地元の大雄山線で見慣れた光景だが