JR東日本は10月1日から,観光列車の車両「のってたのしい列車」の指定席料金を値上げした。厳密には,運賃に330円~530円の指定席料金を追加して乗車できる列車と,840円の指定席料金を追加して乗車できる列車とがあったが,すべての列車で座席指定料金を840円に統一した。
列車名 | 主な運行区間 | 変更前 指定料金 |
変更後 指定料金 |
---|---|---|---|
リゾートしらかみ | 秋田~青森 (五能線経由) |
330円(閑散期) 530円(通常期・繁忙期) |
840円 |
Pokemon with YOU トレイン | 一ノ関~気仙沼 | ||
越乃Shu*Kura | 十日町~上越妙高 | ||
おいこっと | 長野~十日町 | ||
リゾートビューふるさと | 長野~南小谷 | ||
びゅうコースター風っこ | JR東日本管内各線 | ||
客車列車 | 新津~会津若松 (SLばんえつ物語) 高崎~水上 (SLぐんまみなかみ) 高崎~横川 (SLぐんまよこかわ) ほか |
||
HIGHRAIL1375 | 小淵沢~小諸 | 840円 | |
海里 | 新潟~酒田 | ||
B.B.BASE | 両国~房総各線 |
注)2023年10月現在で運行中の時刻表掲載の列車のみ記載
運行コストを利用者に転嫁
JR東日本のプレスリリースを見ると,「(JR東日本を取り巻く)経営環境の変化」「指定席料金の統一」とあり,コストを利用者に転嫁させていることがわかる。「のってたのしい列車」はすべて快速(普通)列車だが,アテンダントが乗車していたり,SL 列車や古い客車では通常の車両よりメンテナンスコストが多くかかっていたりするなど,一般的な普通列車・特急列車よりも経費が高いと思われ,ある程度の料金値上げは理解できる。
一方で,「経営環境の変化が理由」であれば首都圏を含めた運賃の値上げをするべきなのに,国土交通省の認可が必要な運賃の値上げはせず,認可が不要で手っ取り早い指定席料金の値上げをしたのは,利用者心理としてはいただけない。また,「リゾートしらかみ」の一部列車は定期券と指定席券の併用が可能であるが,全車指定席のままであるため,沿線利用者の負担も大きくなっている。
「のってたのしい列車」で運転する列車はすべて値上げ対象
旅客営業規則によればこれらの車両を利用した列車はすべて座席指定料金が840円となる。そのため,越乃Shu*Kura車両で運転される「ゆざわShu*Kura」「柳都Shu*Kura」や,各地に出張運転するびゅうコースター風っこ車両を利用した「風っこ○○号」といった各列車,機関車牽引で運転される客車列車のイベント列車などはすべて530円からなどから840円に指定席料金が値上げとなる。
利用者負担もよく考えて値上げを
JR東日本管内で指定席を連結する普通・快速列車はほとんどが「のってたのしい列車」で,それ以外では快速「はまゆり」(盛岡~釜石)・快速「湯けむり」(仙台~新庄)など,ごく一部だ。コロナ禍以前によく運行されていた特急型車両で運転される快速列車等も廃止されたり特急化したりしているので利用者の負担は大きくなっている。
鉄道は運行する側にとっても高コストだが,利用する側にとっても競合する交通モードに比べてもコストが高い交通手段だ。社会情勢からして運賃・料金の値上げをするのは理解できるが,JR東日本はもっとバランスを考えて検討してほしい。
旅客営業規則(参考)*1
(大人座席指定料金)
第139条の2
大人座席指定料金は、次の各号に定めるとおりとする。
(1)第2号から第5号以外の大人座席指定料金
530円とする。ただし、旅客の乗車する日が、第57条の3第1項第1号に掲げる期間内の日であるときは、330円とする。
(省略)
(3)東日本旅客鉄道会社線内相互発着となる場合の大人座席指定料金
イ ロ以外の大人座席指定料金
第1号に定める額とする。
ロ 「HIGH RAIL 1375」車両、「海里」車両、「B.B.BASE」車両、「びゅうコースター風っこ」車両、「フルーティアふくしま」車両、「POKÉMON with YOU トレイン」車両、「リゾートしらかみ」車両、「越乃Shu*Kura」車両、「おいこっと」車両若しくは「リゾートビューふるさと」車両により運転する列車又は客車を連結して運転する列車に対して発売する大人座席指定料金
840円とする。
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